プロ野球亭日乗BACK NUMBER
巨人が失敗した情報伝達のやり方。
広島戦3連敗と30年前西武に4連敗。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKYODO
posted2020/08/28 11:50
「データが入れば入るほどに相手が大きくなってしまった」と振り返った槙原(左)。デストラーデ(右)らを擁する強力な西武打線に捕まった。
1カ月半、徹底してデータ収集ができたが……。
9月上旬に優勝を決めた巨人にとってはシリーズまでに1カ月半もブランクが空くことが1つの懸念材料だと言われていた。
しかしその反面、この1カ月半で徹底して西武のデータを収集することができた。
当時は交流戦もなく、事前のデータ収集はテレビ局に頼んで集めた試合映像とあとはスコアラーが直接、試合を観戦して入手してくる生データである。
8月末には優勝をほぼ確実にしてスコアラー陣を西武の試合に張り付かせ、巨人は情報戦を優位に進めた。抜きんでた投手力もあり巨人が優位という下馬評も少なくなかった。
しかし戦いが始まるとあまりにあっけない結末が待っていた。
岡崎は「野球観が変わった」と語った。
屈辱の4連敗。
初戦の初回にいきなり槙原がデストラーデの3ランを浴びて5対0で完敗すると、第2戦も斎藤が捕まり3回までに7失点。
第3戦は桑田がやはり初回に3失点して、第4戦に初めて先取点を奪ったものの、5回に先発の宮本が捕まり打者11人の猛攻で6失点しての逆転負けだった。
第4戦の試合後に主力の1人である岡崎郁内野手が「野球観が変わった」と語った言葉通りに、力の差をまざまざと見せつけられた敗北。
まさにV9で築き上げた巨人の「球界の盟主」としての座が、名実ともに西武へと移ったシリーズでもあった。
ただ、本当に両チームにはこれほどまでの力の差があったのか?
実は巨人の中で大きな反省材料として残されたのが、情報伝達の失敗だったのである。