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久保建英vs.マドリーを徹底分析。
中西哲生「相手にスキあれば……」
text by
中西哲生+戸塚啓Tetsuo Nakanishi + Kei Totsuka
photograph byAgencia EFE/AFLO
posted2020/06/26 08:00
チームの実力差はあれど、久保建英は自らの長所を発揮しようとした。レアル・マドリー陣営もそのプレーを注視したに違いない。
仕掛ける姿勢がありながら力まない。
レアル・マドリーにインパクトを与えたに違いないこのシュートだけでなく、2列目の右サイドへポジションを変えてから久保は、自分らしさを発揮できるスペースをしっかりと見つけていきます。
相手の「間」でボールを受けることができ、ワンタッチでボールを離さずに仕掛けられるようになった。味方選手のシュートにつながるラストパスも供給しました。
ここで私が注目したいのは、彼のメンタリティです。
レアル・マドリー相手に0対2となったら、「今日はちょっと厳しくなったな」と感じてもおかしくない。モチベーションに小さなヒビが生じたり、集中力が低下したりすることもあるはずですが、久保はプレーのレベルを落とさないのです。
所属元でもあるレアル・マドリーのジダン監督や選手たちに、自分をアピールするチャンスだという意識を持って、パスを受けたら自分で仕掛ける姿勢を貫いた。それでいて「自分が、自分が」と力むことはない。味方の選手を使うべき局面では、しっかりとパスをつないでいた。
自陣でも抜きにかかる勇気がある。
レアル・マドリーは80分にメンディが、87分にクロースが警告を受けました。いずれも久保へのファウルによるもので、マジョルカ陣内での交錯でした。
相手からすると、ファウルを避けられない場面でした。ボールと相手の間に軸足を置くことで、久保は相手のチェックをブロックしているのです。82分にフェデリコ・バルベルデからファウルを受けたシーンも、軸足の置きどころに狂いがなかったことによるものです。
もうひとつ付け加えておくと、相手にスキあれば自陣でも抜きにかかる勇気が、久保にはあるということです。
マジョルカの再開後の成績は、1分3敗となりました。4試合連続で勝利を逃しているだけに、久保自身は歯がゆさを感じているでしょう。ただ、いまこの時点でできることをしっかりと表現しているのは間違いありません。