“ユース教授”のサッカージャーナルBACK NUMBER
五輪世代FW旗手怜央vs.上田綺世が、
インカレで濃厚なマッチアップ。
posted2018/12/21 17:30
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph by
Takahito Ando
明らかにその瞬間、彼の雰囲気は変わった。
インカレ準決勝・法政大vs.順天堂大の一戦。再来年からの川崎フロンターレ加入が内定している順天堂大FW旗手怜央は、0-0で迎えた63分に闘争心が一気に燃え上がった。
屈強なフィジカルと馬力に加え、高いアジリティーと静岡学園高仕込みの足下の技術を持つアタッカーは、もともと気迫を前面に出すタイプ。そんな彼がさらにその闘争本能をむき出しにした。
そのトリガーは、63分に投入された法政大2年生のFW上田綺世の存在だ。2人とも東京オリンピックを目指すU-21日本代表に選出。旗手は早々に川崎入りを決め、上田も多くのJクラブが“大学生即戦力の目玉”として争奪戦を繰り広げている逸材だ。
上田は2回戦の新潟医療福祉大戦で右肩を痛めたため、この日はベンチスタートだった。だが、0-0で迎えた63分に、法政大が満を持して上田を投入した。
「綺世が入って来た瞬間に、僕の中で“あっ”となった」
旗手はピッチサイドで投入を待つ上田の姿を見て、心の中のスイッチが入ったという。
上田には絶対負けたくない。
「相手の中で一番警戒していた。今年のリーグ戦でもかなり脅かされた選手だったので、気持ちが入りました」
それ以上に彼にとって上田は“絶対に負けたくない相手”でもあった。
「それぞれの大学で同じFWをやっているけど、五輪代表では綺世がFWで、僕はシャドーになる。それでアジア大会などあれだけ点を決めていたら、悔しい部分もある。ライバルはライバルですが、良い部分は積極的に盗んでいきたいと思っています。プレースタイルは違う一方で、しっかりとレベルの高い1人のサッカー選手として見ています」
五輪世代で同じFW。意識するなという方が無理だし、そこで競争心が生まれなければ、プロの世界ではやっていけないだろう。それをモチベーションに変える選手が上に行ける世界だ。
旗手はまさにそんなタイプである。