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「彼の打ちにくさを生んでいるのは…」浦和実業・石戸颯汰“打たれない120キロ”の秘密は? プロスカウトの助言は「スピードを欲しがらないこと」

posted2025/03/28 17:05

 
「彼の打ちにくさを生んでいるのは…」浦和実業・石戸颯汰“打たれない120キロ”の秘密は? プロスカウトの助言は「スピードを欲しがらないこと」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

遅い直球と超変則フォームで強豪校を抑え込んだ浦和実業のエース・石戸颯汰。「飛ばないバット」時代の申し子とも言える活躍だった 

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安倍昌彦

安倍昌彦Masahiko Abe

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 熱戦が続く春のセンバツ高校野球。3月28日現在、準決勝まで進出し、大会の「台風の目」となっているのが初出場の埼玉・浦和実業高だ。中でも甲子園に新たな風を吹き込んだのが、エース左腕の石戸颯汰投手。現代高校野球では決して速いとは言えない120キロ台の球速ながら、準々決勝まで18イニング連続無失点。では、なぜ彼の投球は打たれないのか。これまで多くの選手を見てきたプロスカウトが分析した、そのすごさの秘密とは?《NumberWebインタビュー全2回の2回目/最初から読む》

 あるスカウトの方が、こんな話を聞かせてくださった。

「石戸君みたいな変則タイプのピッチャーって、フォームを見ちゃダメなんです、バッターは。でも、どうしても見ちゃうんですよ、あんなフォーム初めてだし、珍しいから、どうしてもフォームから追っかけちゃう。そうなると、もうダメ。こっちの視線も、頭の中も、全部混乱させられてしまう」

「あえてフォームは見ないようにして…」

 打者がよく言う、リリースが見にくい……それは、フォームを追いかけてしまうせいだという。

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「彼みたいな変則は、リリースポイントだけ見ていればいいの。あえてフォームは見ないようにして、ボールが出てきそうなあたりだけをジッと見つめる。変則タイプって、石戸君もそうだけど、スピードはそんなにないピッチャーが多いから、リリースポイントだけ見ていても、タイミングは間に合う。逆に、フォームの最初から見ていたら、視線もバラつくし、タイミングだって崩されますよ」

 プロ野球にも、石戸投手のような変則サウスポー、以前から何人も活躍していたという。元オリックス・星野伸之投手は、その代表格としてすでに話題にのぼっているが、

「ほかにも、カープの清川栄治さんとか、西武やダイエーで投げていた永射(保)さん……ロッテの佐藤政夫さんなんて、両腕を大きく伸ばして、ヒラヒラさせてね。みんな大先輩ですけど、リリーフで活躍されていました。そういうピッチャーが出てくると、コーチの人が怒鳴るんですよ、『フォーム見るなよー、(ボールが)出てくるとこだけ見とけー!』ってね。それでも、なっかなか打てない」

【次ページ】 「石戸の打ちにくさ」を生んでいるのは…?

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#石戸颯汰
#浦和実業高校

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