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「左対左は投手有利」は本当か?
“勇気”で化けた、巨人・今村信貴。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byKyodo News

posted2018/08/17 11:30

「左対左は投手有利」は本当か?“勇気”で化けた、巨人・今村信貴。<Number Web> photograph by Kyodo News

広島打線を抑え、キャッチャーの小林誠司とタッチをかわす今村信貴。

攻略の鍵となった変化球とは?

 その後もローテーションの一角を任されて、8月5日の中日戦では9回121球を投げて6安打のプロ入り初完封勝利を飾ると、同12日の広島戦でも7回1失点でチームのマツダスタジアムでの連敗記録を13でストップする4勝目を飾っている。

 この間の左右別の被打率は右打者に対しては94打数16安打の1割7分とほぼ完璧。そして左打者に対しても68打数16安打の2割3分5厘と“アレルギー”を全く感じさせない数字まで克服しているのである。

 そこで「勇気」の話だ。

 実はこの左攻略のカギになったのがシュートなのである。

「去年の秋ぐらいからシュートを積極的に使い出してピッチングが変わったのが大きいよ。ケガで出遅れたけど、本当なら今年は最初から計算していたピッチャーだったんだ」

 こう語るのは斎藤雅樹投手総合コーチだ。

 本人もそのシュートが覚醒のスイッチだったと認めながら、だがそのシュートに命を吹き込んだのは気持ちだったと語っている。

「今年のピッチングで一番、変わったのはやっぱりシュートだと思います。シュートのキレが出たことで、ピッチングの幅が広がった。ただ実はシュートそのものは2、3年前から投げていたんですけど、今年は一軍に上がってきたときに、投げるときの気持ちを変えたんです。それが大きかったと思います」

左打者のインサイドに投げ込む勇気。

 今村は言う。

「左バッターに対してもインコースに勇気を持って、思い切って腕を振って投げようと決めました」

 すかさずこう聞いた。

「当ててもいいぐらいの気持ちで?」

 一瞬の間があって、今村はこっくりとうなずいた。

「あくまで気持ちの問題ですけどね。でも、今まではどうしても左打者のインコースに腕を振って投げ切れていなかったと思うんです。だから踏み込まれてスライダーも打たれるし、左に打たれていた。でも、そこで左打者のインサイドに投げ込む勇気を持ったのが大きかったと思います」

 それが過去の今村と、プロ初完封まで記録した今年の今村の最大の違いだった。

【次ページ】 「割り切って投げ切る勇気」が重要。

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