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「左対左は投手有利」は本当か?
“勇気”で化けた、巨人・今村信貴。
posted2018/08/17 11:30
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph by
Kyodo News
野球の世界では当たり前のようになっている「左対左の法則」は、果たして正しいのか?
確かに一般論としては、左投手を苦手にする左打者は多い。ところが立場を逆にして投手の側から考えると、実は左打者を苦手にしている左投手も、意外と多いのである。
現役ではDeNAの今永昇太投手は、右打者の被打率が2割7分3厘なのに対して左には3割3分3厘も打たれている。また広島のクリス・ジョンソン投手も右打者は2割1分8厘に抑え込んでいるのに、左に2割8分6厘という数字だ。極端なのは巨人で売り出し中のカリビアン左腕、C.C.メルセデス投手だ。右打者は1割3分9厘とほぼ完璧に抑え込んでいるのに比して、左には3割5分4厘と打ち込まれている。
となると「左対左の法則」に従って、チャンスでメルセデスに右の代打を送り込む相手ベンチは愚の骨頂。セオリーに反しても、左打者を出した方が攻略のチャンスは広がるということになるわけだ。
左対左は投手有利と限らない。
「昔の打者は外角に逃げる球を苦手にしていたが、現代の左打者は左投手のスライダーなどにも上手く対応しており、左対左は投手有利という一般論が必ずしも成り立たなくなった」
左が左に打たれる理由をこう語っているのは、中日のエース左腕として君臨した今中慎二さんだ。今中さんも現役通算で右打者には2割4分4厘、左には2割6分3厘とちょっとばかり左に分が悪かった投手の1人だ。
また「サウスポーがスライダーを投げる時に右打者だと膝もとを的に投げられるが、左打者だとその的がなくなってかえってコントロールがしづらい」という話を聞いたこともある。
それではこの“左打者アレルギー”を、投手はどう克服するのか。