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「左対左は投手有利」は本当か?
“勇気”で化けた、巨人・今村信貴。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/08/17 11:30
広島打線を抑え、キャッチャーの小林誠司とタッチをかわす今村信貴。
左打者を苦手とする左投手が変身!?
「勇気でした」
こう語ったのは巨人の今村信貴投手だ。
実は今村もずっと左が苦手な左投手の1人だったのである。
大阪の太成学院大高から2011年のドラフト2位で入団してプロ6年目。2年目にいきなり一軍初勝利を挙げたが、その後はなかなか結果を出せずに一軍と二軍をいったりきたりする生活が続いた。
くすぶり続けた理由はいくつかある。スタミナ不足、細かな制球力の甘さ……ただ、データ的にはっきり出ていたのが左打者へのピッチングだった。
開幕直後から8月までローテーション入りしていた2016年は、14試合に先発して3勝4敗、防御率は5.59という成績だった。このときの左右別の被打率は右が2割4分2厘に対して左には3割6分4厘と打ち込まれている。
今村が先発して中盤の勝負どころでベンチが継投を考えたときに、打席に左打者を迎えるとベンチは「ここを何とか凌いで次の右打者で交代」と考えるが、その左打者に打たれて致命的な失点をしてしまう。
今村の1つの負けパターンだった。
だが、今季はちょっと違う。
一軍昇格していきなり1勝!
昨年はほぼシーズンを通じてファームで過ごしたが9勝を挙げてイースタン・リーグの最多勝、最多奪三振(92個)、最高勝率(6割9分2厘)という活躍を見せていた。ところがオフに参加した台湾ウインターリーグで故障して、キャンプは三軍スタート。その後も小さな故障などでなかなか上で投げるチャンスが来なかった。
ようやく一軍昇格を果たしたのが6月6日。その日の楽天戦で先発すると6回を投げて4安打無失点でいきなり今季1勝目をマークした。