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「左対左は投手有利」は本当か?
“勇気”で化けた、巨人・今村信貴。
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byKyodo News
posted2018/08/17 11:30
広島打線を抑え、キャッチャーの小林誠司とタッチをかわす今村信貴。
「割り切って投げ切る勇気」が重要。
もともとは真っ直ぐとキレのあるスライダーを武器にする投手だったが、今年はこのシュートばかりでなく、時速90キロ台のスローカーブも実戦投入。12日の広島戦では女房役の小林誠司捕手と「カーブを多めに使おう」と相談して真っ直ぐ系に強い赤ヘル打線を翻弄して封じ込むのに成功した。
「コントロールが難しいので、あくまで緩急をつけるためのボールとして使っています。それでも目先を変えるということでは有効なので、これも効果はあったと思います」
意表を突けば相手は手も出せない。ただ、あれだけスピードを殺した緩いボールを投げるのに必要なのは、やはり割り切って投げ切る勇気なのである。
野村克也元ヤクルト監督は、伸び悩んでいる投手に「シュートを覚えろ」と指導することが多い。ただ、そう指導しても本当にシュートを投げられるようになって、再生する投手は数えるほどしかいないのが現実でもある。
投げるのは簡単だが、胸元をえぐる心の強さがないと投げる意味はない。
シュートとはそういうボールなのである。