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「那須川天心がナーバスになっている…」モロニー戦でカメラマンが察知した“異変”…思い出した“あの激闘”「天心の勝ちはない。よくて引き分けだ」 

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長尾迪

長尾迪Susumu Nagao

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photograph bySusumu Nagao

posted2025/03/05 17:01

「那須川天心がナーバスになっている…」モロニー戦でカメラマンが察知した“異変”…思い出した“あの激闘”「天心の勝ちはない。よくて引き分けだ」<Number Web> photograph by Susumu Nagao

前WBO世界バンタム級王者のジェイソン・モロニーを判定3-0で下し、那須川天心はプロボクシング戦績を6戦6勝とした

 文中に含まれた「恐怖心」という単語、そして試合直前のナーバスな表情。今回ばかりは、天心の負けもあるかもしれない。そう覚悟して撮影に臨んだ。

 結果は既報の通り天心の勝利だったが、前世界王者からボクシングの洗礼を受けた。パンチを効かされ、流血しながら打ち合い、目の下には青あざが残った。それでも、試合後の天心は晴れやかな表情を見せていた。これでようやくボクサーの仲間入りができた、とでも言うかのように。

「破壊神」ロッタン・ジットムアンノンの脅威

 ボクシング転向後、天心は時間をかけて自身のスタイルを体得しつつある。キックボクシングでは脚への直接の打撃があるため、ふくらはぎから太ももにかけて大きな筋肉で覆われていたが、いまは余分な肉がそぎ落とされ、引き締まった脚になった。上半身も腕、肩、背中が大きくなり、いわゆる逆三角形のシャープなボディに変わった。前後左右、自由に動き回るステップワークは華麗さとスピードを増した。年内にはいよいよ世界のベルトに挑戦するプランも浮上している。苦しみながら掴み取ったモロニー戦での勝利を糧に、彼はますます成長し、強くなるだろう。

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 モロニーに苦戦する天心を撮影しながら、7年前のある試合がオーバーラップした。5ラウンドでは決着がつかず、延長戦で薄氷の勝利をものにした激闘――同時に、実力を2段階も3段階も上げるきっかけになった試合でもあった。このとき天心を最も苦しめた選手の名を、ロッタン・ジットムアンノンという。

 ロッタンはMAXムエタイやオムノーイスタジアムの王者を経て、2018年6月17日に初代RISE世界フェザー級(57.1kg)王座決定戦で天心と向かい合った。筋骨隆々の肉体から繰り出すアグレッシブな打撃戦を得意としており、対戦相手を徹底的に打ちのめすファイトスタイルから「破壊神」というニックネームを持つ20歳の強者だった。

 一方の天心は当時19歳。プロデビューから24連勝中で、そのうち19試合がKO勝ちという驚異的な“倒し屋”だった。

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