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佐々木朗希が投げなかった“登板回避”…決勝相手だった花巻東の監督が明かす本音「私も大谷翔平の登板を回避した」天才を育てる“苦悩” 

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柳川悠二

柳川悠二Yuji Yanagawa

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photograph byAsami Enomoto

posted2024/08/24 17:23

佐々木朗希が投げなかった“登板回避”…決勝相手だった花巻東の監督が明かす本音「私も大谷翔平の登板を回避した」天才を育てる“苦悩”<Number Web> photograph by Asami Enomoto

2019年夏、岩手大会決勝の試合後。佐々木朗希は登板せず、花巻東に敗れた

大船渡の現監督「國保先生は熱い方」

 高校野球に大きな変革を招いた青年監督は、2021年夏をもって大船渡の監督を退任し、2023年3月までは副部長や部長を歴任した。代わって監督となったのが國保の3歳下で、佐々木朗希の卒業のタイミングで大船渡に赴任してきた新沼悠太だ。一関一高校時代には阿部寿樹(東北楽天)と同級生で、卒業後は青山学院でも野球を続けた。

 新沼もまた國保と同じように積極的に選手交代を行い、沿岸部で育った球児たちを総動員する戦い方で、今春の岩手県大会はベスト4に進出した。新沼が話す。

「國保先生のもとで1年半一緒にやらせてもらって、今までにない野球の価値観、考え方を勉強させてもらいました。騒動もありましたが、本来の國保先生は、想像される以上に熱い方なんですよ。ゲーム中も熱くなってくると、ベンチで誰よりも声を出す。魂を込めて野球をやる人なんです」

 もちろん、投手の投球障害予防に対する見解も、アメリカ独立リーグの経験もある國保に学んだ。新沼にとって、佐々木朗希の弟である怜希は愛弟子だ。MAX146キロの投手だった新沼から見ても、本格的に投手に取り組んでおよそ半年の怜希のポテンシャルの高さには驚いた。

「お兄さんとは違って身長も高くありませんが、大学時代に146キロを投げた私と比べても素材がぜんぜん違う。将来的には150キロを超えてくるような投手だと思います」

 怜希は卒業後、投手として中央大学に進学した。兄と同じ道を——と、つい期待してしまいがちだが、國保や新沼がそんな言葉を口にすることは絶対にない。

國保が語る「佐々木朗希の今」

 5年目のシーズンを過ごす千葉ロッテの佐々木朗希は、6月8日の広島戦で5勝目を挙げたあと、「右上肢のコンディション不良」を理由に登録を抹消。右腕の肩なのか、ヒジなのか、筋肉系のトラブルなのか、じん帯の負傷なのか、何も詳細が語られないために、様々な憶測を呼ぶ結果となった。

 1年目の2020年は体作りに専念し、2年目には登板間隔に配慮されながら11試合に登板した。3年目のシーズン序盤に完全試合を達成したその右腕は、いまだ諸刃の剣であり、ガラスのように脆く、指導者にとっては起用を慎重に考えざるを得ない身体なのだろうか。

 37歳になり、現在は母校である盛岡第一高校の副部長を務める國保は慎重に言葉を選びながら、こう話した。

【次ページ】 筆者が見た「5年目の真実」

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