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佐々木朗希が投げなかった“登板回避”…決勝相手だった花巻東の監督が明かす本音「私も大谷翔平の登板を回避した」天才を育てる“苦悩” 

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柳川悠二

柳川悠二Yuji Yanagawa

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photograph byAsami Enomoto

posted2024/08/24 17:23

佐々木朗希が投げなかった“登板回避”…決勝相手だった花巻東の監督が明かす本音「私も大谷翔平の登板を回避した」天才を育てる“苦悩”<Number Web> photograph by Asami Enomoto

2019年夏、岩手大会決勝の試合後。佐々木朗希は登板せず、花巻東に敗れた

「現状はわかりませんが、大前提として、朗希に限らず千葉ロッテのみなさんは、リーグ優勝、CS、日本一に向けて、コンディションを保ちながら戦っているでしょう。後半戦を睨んで、朗希を休ませたと考えることだってできますよね」

 高校時代の佐々木に対し、國保はまだ成長過程にある身体だとして、登板間隔や球数に配慮しながら起用していた。佐々木の身体の成長が止まる時期や肉体のピークに対する見解も訊ねた。

「生物学の専門家ではないので、何年後がピークになるのかは正直、わかりません。ただ、高校生の時点では血液検査や骨密度などを測った結果、投げすぎてしまうと危険があると判断したんです」

 2年目から4年目にかけてあれほど160キロを連発していた佐々木が、今季は160キロを記録したボールが少なく、“右上肢”の負担を少なくするためにも、出力を抑えて投げている印象もあった。

「本人しか狙いはわかりませが、球速を抑え、コントロール重視で投げているのなら、ひとつステージの上がったピッチングだと思います。ただ、抑えて投げるということでむしろ負担が大きくなることもある。なので、一概にケガのリスクがないとも言えないんですが」

筆者が見た「5年目の真実」

 佐々木は8月1日の埼玉西武戦で、54日振りのマウンドに上がった。前半は150キロ台後半のストレートを主体にしながら、決め球のフォークが抜ける場面もあったが、尻上がりに調子を上げ、5回には160キロも記録した。3安打1失点で6勝目。上々の再起登板であり、監督の吉井理人も胸を撫で下ろしたことだろう。しかし、復帰2戦目には5回3失点で3敗目を喫し、3戦目(8月15日)は左足首に打球が直撃するアクシデントにより、2回途中わずか16球で降板。復帰4戦目(8月22日)は6回6安打4失点で今季4敗目となった。

 あの夏の岩手大会決勝後、佐々木は「投げたかったです」とコメントを残した。だが、その日の朝や試合中に佐々木が國保に対して登板を直訴することはなかった。投げたら壊れてしまう――佐々木自身もそう感じていたからこそ、無言で従ったのではないだろうか。

 令和の怪物は22歳になっても、いまだ指導者(千葉ロッテ首脳陣)が慎重に起用せざるを得ない肉体であり、不安定な状態が続く。高校時代から大切に育てられてきた佐々木自身が今、誰より奥歯を噛んでいるに違いない。

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