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野球クロスロードBACK NUMBER
「菊池雄星と大谷翔平で免疫ができた」佐々木朗希を圧倒した盛岡大附の名コーチが“女子野球部”の監督に…「3年で日本一」を掲げるワケは?
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph by(L)Hideki Sugiyama、(R)JIJI PRESS
posted2024/06/27 19:01
菊池雄星、大谷翔平らと熱戦を繰り広げた盛岡大附高のコーチだった松崎克哉は、4月から聖光学院女子野球部の監督に就任した
聖光学院は01年夏に甲子園初出場を果たしながら、初戦で0-20の記録的大敗という厳しい現実を味わった。屈辱に苛まれた監督の斎藤は、ここで「甲子園は出て満足する場所じゃねぇ。勝ちに行く場所だ」と決意を新たに立ち上がるわけだが、その翌年に入学したのが松崎だった。そして、3年生となった04年夏に2度目となる甲子園の舞台に立った聖光学院は、初勝利を含む2勝を挙げる。
無名から強豪へ。聖光学院の成り上がりの第一歩こそ、松崎がいたチームだったわけだ。
それから20年。誕生したばかりの女子野球部の監督に松崎が就任する――まるで、導かれるように描かれたシナリオである。
「3年で日本一」を掲げる理由は…?
このときから、松崎は到達点を決めている。3年で日本一。
男子野球部で部長を務める横山博英からは、会うたびに「言ったからには成し遂げないとな。プレッシャーだぞ」と煽られる。松崎に、気負いはない。
「日本一を掲げることに価値があるわけです。そもそも、監督をやるからにはそこを目指さないと面白くないじゃないですか」
ユース大会と選抜大会に並ぶ高校女子野球「3大大会」のひとつであり、最大のタイトルである選手権大会が7月に開幕する。女子野球部の加盟校が62校のため予選はない。全国の高校が決勝の舞台である甲子園球場を目指し、トーナメントで覇権を争う。
1年生だけで立ち向かう初陣。現実は甘くはないはずである。今は「強豪の聖光学院に女子野球部が誕生した」と注目されるだろうが、結果が伴わなければ周囲の関心は少しずつ薄れていくだろう。
プロ野球の名将・野村克也は「三流は無視。二流は称賛。一流は非難」と残している。ここに倣えば、厳しいようだが聖光学院はまだ三流以前。興味の対象とされている段階だ。
無視されて、改めて痛感する現在地。そこからが、本当の意味での勝負であり、聖光学院の生き様が問われてくる。
ダルビッシュ、菊池、大谷、佐々木。
強者に立ち向かってきた男はひるまない。
「1年、2年、3年とこの子たちと切磋琢磨していけば、精神的に成熟した集団になれるんじゃないかという、手応えはありますよ」
聖光学院の体現者は、不敵に笑う。