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「箱根駅伝にトラウマができた感じで…」天才ランナーは“実家に帰った”「陸上から離れていた」エースの復活…東洋大の逆襲はここから始まる
posted2024/06/26 17:22
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Yuki Suenaga
東洋、いいじゃないか。
今年は11月3日に行われる全日本大学駅伝の関東地区選考会がこのほど行われ、東海大学が1位通過、9秒ほど遅れての2位に東洋大が入った。
今回の走りを見る限り――「鉄紺復活」が本物と信じて良さそうだ。
なにより、内容が良かった。
1組では1年生の松井海斗(埼玉栄)、2組では網本佳悟(3年/松浦・長崎)がそれぞれ組トップでフィニッシュ。1年生の宮崎優(東洋大牛久・茨城)も2組の4位に入ったが、全員が集団のなかで自重しながらトップをうかがうのではなく、積極的に集団を引っ張ったうえでの好成績。日常の練習の充実、そして意識の高さがうかがえた。
レース後、「今年は久々に東洋らしいチームになりそうで、楽しみですよ」と酒井俊幸監督に声をかけると、
「ありがとうございます。やっと、学生たちが正面から言葉を受け止めてくれるようになりました。素直だといえるかもしれません。私としても、言葉が浸透していく手ごたえがあるんですよ」
酒井監督も勝負に行ける予感を持っているようだが、「なにより4年生が充実しているのが大きいです」と話す。
ぷっつりと情報が“消えた”
その象徴が3組に登場した石田洸介(4年/東京農大二・群馬)だった。
石田は、福岡の浅川中学校時代から世代トップをひた走ってきた。
2017年9月、彼が中学3年生の時に1500mの中学記録を出した日体大記録会の走りは、まさに衝撃だった。実業団の一線級のランナーに勝ちそうになったほどだった。結局、1500m、3000m、5000mの中学記録を更新。年明けの全国都道府県駅伝でもひとりだけ体つきが違っており、格の違いを見せつけていた。高校進学にあたっては福岡を離れ、群馬の東京農大二高に進んだが、順調に記録を伸ばし世代ナンバーワンにふさわしい走りを見せていた。