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「翔平が怒ってます」「怒らせとけ」栗山英樹監督が日本ハム時代の大谷翔平に言い続けたこと「チームを優勝させてから行け。なぜなら…」
posted2024/04/20 11:03
text by
栗山英樹Hideki Kuriyama
photograph by
JIJI PRESS
『信じ切る力 生き方で運をコントールする50の心がけ』(栗山英樹著/講談社刊)より抜粋して公開します。<全2回の第1回/第2回も配信中>
メジャーに挑戦したい選手への「判断基準」
選手について何かをしようとするとき、監督としての僕が強く意識していたのは、これでした。
「選手のためになるか、ならないか」
ファイターズ時代は、球団も同じ判断基準を持っていました。
例えば、メジャーに挑戦したい選手がいたとする。どうしても行きたいと言っている。でも、能力的に今、行っても成功しないと判断したら止める。それは、選手のために止めるのです。
しかし、力があって行きたいのに「もう一年我慢してくれ」はしない。なぜなら、その一年間は無駄だから。
人間は、心が必死にならないと、いいことは起こりません。本当に行くと決めていて、本人の能力が備わっていると判断できれば、行かせるというのが僕やGMのヨシ(吉村浩)のスタンスでした。
実際、ダルビッシュもそうでしたが、ファイターズはどんどん選手を外に出しました。ドラフトで指名しても、相手が納得しないならあきらめました。FA(フリーエージェント)でも引き留めなかった。もし、引き留めていたら、大変な選手層になっていたと思います。
でも、しなかった。出たい人たちのためには、そうしたほうがいいし、そうするべきだと考えたからです。挑戦するべきなのです。監督としては、「あの選手がいてくれたら」などと冗談で言ったりしていましたが、選手を出すことに対して、球団に文句を言ったことは一度もありませんでした。
高校時代から、メジャーに行きたいと宣言していた翔平についても同じです。
「二刀流は優勝するためにあるんだ」
例えば、翔平が入団したのは、ファイターズがリーグ優勝した翌年です。チームが優勝すればその先数年は、チームの将来についてビジョンを描く余裕ができます。その年、チームは最下位に沈んでしまいましたが、だからこそ、若手を積極的に使うことができたのも事実です。翔平にも、思い切ったことをさせられた。翔平がメジャーに行くために物事が進んでいるな、野球の神様が絵を描いているな、と僕は思っていました。WBCの決勝戦のずっと前から、そんな流れができていたのです。