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スピード練習ナシ、距離もペースも自分次第、コースは鹿の出る公園…高校駅伝で大躍進《京大合格約30人》京都の公立進学校「超自律型練習法」
text by
山崎ダイDai Yamazaki
photograph byYuki Suenaga
posted2024/01/21 11:01
府立の中高一貫進学校である洛北高。時間の制約もあり、そのトレーニングは独自色が強い
スピード練習は「ほとんど行わない」
ちなみに長距離ランナーには必須とも思われるインターバルトレーニングのようなスピード練習は「ほとんど行わない」という。
――ひょっとして、そこに何か監督のこだわりが?
そんなことを尋ねると、難波は苦笑する。
「いや、ホントだったらガンガンスピード練習させたいですよ(笑)。でも、それができる環境がないんです。午後の本練習は夜の7時までの2時間で完全に終わらせないといけないですし、競技場まで行くとなるとそれだけで時間がかかってしまう。学校の近隣ではスピードを上げて走れるような場所もないので、苦肉の策でいまのような状態になっているだけです。そういう意味では悩ましいですね」
ただ、そんな環境下であっても、難波の指導の意図を汲みながら、選手たちは着々と力をつけてきた。
5000mで14分10秒台の記録を持つ三宅勇希(4月から順大)、坂元南紬太(4月から専大)ら3年生の中核選手を筆頭に、24人いる長距離部員の実に半数以上が5000mで14分台の記録を持つ。いずれも中学時代は大きな実績はない選手たちだ。
特筆すべきは、その持ちタイム以上に駅伝で力を発揮する選手が多いことだ。
坂元は全国屈指のハイレベルである近畿高校駅伝のエース区間1区で区間賞を獲得しているし、京都府大会では三宅も4区で持ち記録では上回る選手たちを抑えて区間賞に輝いている。また、坂元は激戦区の京都府代表として都道府県対抗駅伝への出走も予定されている。
おそらくだが、上述のような練習環境も駅伝への無類の強さに寄与しているのではないか。
洛北高校の選手たちは常に個々人で練習を管理し、毎日強度も距離もそれぞれバラバラにトレーニングを積んでいる。そのため、日々の練習はいきおい単独走になることが多い。1人でペースを作り、きついところでも耐えるという要素は、まさに駅伝に最も必要な能力だろう。