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恩師が「モノで言えば歴代最強」…でも勝てなかった“早稲田のエース”が覚醒のナゼ 山口智規(2年)初の箱根路へ自己評価は「強いっす」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2024/01/02 09:00
2023年は飛躍の年となった早大の山口智規(2年)。日本長距離史上でも屈指のポテンシャルは箱根路で花開くか
プラハ遠征での出会いも山口に大きな影響を与えた。山口らが出場したレースの覇者である、エチオピアのタデッセ・ウォルク。2021年のU20世界選手権で3000mを制し、5000mで銀メダルを獲得した実力者だ。そのタデッセとはレース前日の練習中に話しかけられて、レース当日や翌日に一緒に朝食をとるほど仲良くなったという。
「彼は大学4年生の年代で、年もそんなに変わらないのに、10000mを26分45秒で走っている。それでも、シニアでは国の代表になれない。すごい環境で走っているんだなと思いました。日本は良くも悪くも恵まれ過ぎている。“世界、世界”って言っていても、このままだと辿りつくことはできない」
意識がまた一段高くなり、練習の質も量も上げていった。
「山口はしっかりしているので、走る前と後に必ず電話をくれるんですよ。だんだん自信をつけてきて、発言する内容も以前とは全然違いますね」
高校の恩師・松田もまた、山口の心の成長を感じ取っている。
上尾ハーフの直後には「ああいう走りをしたので『2区を走りたい』とメディアには話しましたが、本当は1区か3区を走りたいんですよね」と山口は本音を漏らしていた。
だが、12月中旬には「2区でも勝負したいなと思っています」ときっぱりと言い切っている。それはエースとしての自覚と自信の現れなのだろう。
“三本柱のひとり”から、真のエースへ
今季の早稲田は、山口、石塚陽士、伊藤大志(ともに3年)の3人が“三本柱”と言われてきた。だが、山口は「三本柱と言われるのがちょっと悔しかった」そうだ。
「上尾ハーフで結果が出たので、それ以降は『僕がエースだぞ』っていう取り組みと箱根に向けた準備をしてきました」
今回の箱根の2区は、駒澤大の鈴木芽吹(4年)、中央大の吉居大和(4年)の対決に注目が集まる。さらには、國學院大の平林清澄(3年)、中央学院大の吉田礼志(3年)といった、学生長距離界を代表する選手に留学生も顔をそろえる。そんな選手たちが相手でも、臙脂の新エースは臆することはない。
上尾ハーフでの衝撃を、箱根でも――。