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恩師が「モノで言えば歴代最強」…でも勝てなかった“早稲田のエース”が覚醒のナゼ 山口智規(2年)初の箱根路へ自己評価は「強いっす」
posted2024/01/02 09:00
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph by
Satoshi Wada
「強いっす」
昨年12月中旬、早稲田大学の山口智規(2年)に調子を尋ねた時のことだ。
こんな答えが返ってきた。
「メンタルが弱いんです」と話していた1年前とは別人のように自信に満ちた山口の姿があった。
それもそのはずだろう。昨年11月19日の上尾シティハーフマラソンで、あの大迫傑(Nike)が持っていたハーフマラソンの早稲田記録を更新してみせたのだ。大迫が1年時に出した記録とはいえ、それを30秒以上も上回る1時間1分16秒という記録は、日本人学生歴代でもトップ10に入る。しかも15km以降は独走で、他の日本人選手を圧倒した。序盤に抜け出した山梨学院大の留学生、ブライアン・キピエゴにも最後は9秒差にまで迫った。
「上尾以降もさらにレベルアップできている。練習ができていて、今までの大会の中で一番良い状態で箱根を迎えられます」
あの衝撃の走りからさらに調子を上げていると言うのだから、山口の箱根駅伝に期待せずにはいられない。
前回の箱根は7区を予定していたが、直前に胃腸炎になった影響で出走メンバーから外された。今回が箱根デビュー。しかも、エース区間の2区だ。
日本長距離界のエース以上の素質
「日向以上にキレがある。なおかつ、日向は長い距離に苦手意識があったんですけど、山口の場合は長い距離もいける。“モノ”は確かに山口のほうがありますね」
こう話すのは、山口の学法石川高時代の恩師・松田和宏だ。
日向とは中学から世代トップを走り続け、2022年オレゴン、23年ブダペストと世界選手権に2度、5000mで出場した遠藤日向(住友電工)のこと。山口の高校の先輩に当たる、日本長距離界のトラックのエースと比しても、山口の才能は秀でているという。つまりは、世界を目指せる逸材というわけだ。
しかし、松田はこう言葉を続ける。
「あいつは気持ちが弱かった。練習ではものすごく強かったんですけど……。逆に、日向は気持ちがものすごく強い。絶対に負けなかったですから」