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「ヌートバーのスイングは“面を長く使える打ち方”」谷繁元信が語る日韓戦の勝因と“村上宗隆へのエール”「たしかに調子は悪い。ただ…」
text by
谷繁元信Motonobu Tanishige
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/11 17:02
WBC2試合を終えて打率5割、守備でも好プレーを連発しているラーズ・ヌートバー。谷繁元信氏は「MLBでももっと打率を残せる」と太鼓判を押す
村上宗隆が責任を抱え込む必要はない
もちろん、村上にヒットが出ていないのは少し心配です。ただ、どんなチームでも全員がいい状態ということはない。今回はたまたま村上が目立ってしまっていますが、それでも8点(中国戦)、13点(韓国戦)と得点は入っている。チームで戦うのが野球ですから、彼ひとりが責任を抱え込む必要はありません。
実際のところ村上の調子がどうなのかというと、これはもうはっきり、悪いと思います。
具体的にどう悪いのか。僕が思うに、選手にはそれぞれ調子を上げていくために必要な打席数があり、10打席や20打席で本調子に持っていける選手もいれば、30、40と必要な選手もいる。その点、村上は少し実戦が足りなかったのかな、と。タイミングにしても、スイングのフォームにしても、本調子のときと比べるとやはり「ズレ」があるように感じます。
たとえば、「シーズンのいいときだったらこのボールは見逃していないだろう」という球に反応できないのは、自分のタイミングで振れていないから。でも、これは仕方ない部分もあります。彼がプロになって今年で6年目ですが、春先のこの時期にベストに持っていかなければいけないのは初めての経験でしょう。調整は決して簡単ではないですし、自分では「できる」と思っていても、ちょっとしたズレが徐々に大きくなっていったのでは。僕はそう見ています。
打者というのは、打てないことによってメンタル的にも苦しくなっていく。これだけ日本中が期待している試合で、おまけに4番。彼のなかで余計にマイナスが大きくなってしまっているのかもしれません。
2006年WBC、福留孝介はいかにして復活したのか
2006年のWBCで、福留孝介が不調に苦しんでいたことを覚えている人も多いと思います。僕も普段から一緒にやっているチームメイトだったので多少アドバイスをしたり、打撃投手として練習に付き合ったりもしました。結局、状態の悪い選手にできるのは、少しでもよくなるように毎日毎日練習しながら、試行錯誤を続けること。それだけです。改善するための地道な努力以上の“特効薬”のようなものはありません。
孝介はスタメンから落ちても準備を怠らず、準決勝の韓国戦で起死回生の代打2ランを打ちました。当時の孝介と今回の村上を重ね合わせるわけではないですが、重要な場面で結果を出すことができれば選手は報われる。そういう意味では、村上も報われてほしいですね。
村上の打順に関して、栗山英樹監督がどう判断するのかはわかりません。もし仮に4番から外れることになっても、戦いが厳しさを増す準々決勝あたりから復調してくれればいいのでは、と。それくらいの気持ちで見守っていければと思います。<3月12日のオーストラリア戦後にも谷繁元信氏の解説を掲載予定です>
(構成:NumberWeb編集部)
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