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「大谷翔平の選出に異論なし。それでも…」谷繁元信が選ぶ侍ジャパンの“個人的なMVP”とは?「彼がいなければ準決勝で負けていた」
posted2023/03/23 17:46
text by
谷繁元信Motonobu Tanishige
photograph by
Getty Images
2023年のWBCは、日本にとって最高の形で幕を閉じた。メキシコとの激闘をサヨナラで制し、迎えたアメリカとの決勝。3対2とリードして迎えた9回に、大谷翔平がマイク・トラウトから空振り三振を奪ってゲームセット――信じがたいほどドラマチックだった侍ジャパンの戦いを、2006年WBCの優勝メンバーで元中日監督の谷繁元信氏はどう見たのか。NumberWebの短期集中連載の最終回では、侍ジャパンの“個人的なMVP”を選出してもらった。(全2回の2回目/前編へ)
「大谷翔平のMVPに異論なし。それでも…」
大会のMVPには大谷翔平が選ばれましたね。異論なんてあるわけがない(笑)。打っては打率.435、1本塁打、8打点。投げては防御率1.86で2勝1セーブって、常識的にはありえない成績ですよ。しかも最後にトラウトを抑えて胴上げ投手ですから。あんなマンガみたいなことができるのは、間違いなく地球上で大谷ひとりだけです。他の選手には絶対にできない。このMVPに文句をつけられる人はいないでしょう。
それでも、あえて“個人的なMVP”をあげるとするなら、僕は吉田正尚を選びたい。大会新記録の13打点には、それくらいの価値があります。言わずもがなですが、彼の3ランがなければ準決勝は間違いなく負けていました。絶体絶命の日本を救った選手ですし、メジャー移籍初年度で出場を決意してくれたことも、もっともっと称えられていいと思います。
素晴らしい打撃技術を持っていて、フィジカルもメンタルも本当に強い。彼がオリックスにいた昨季まで、「いま日本にいる左打者でナンバーワンは吉田正尚」というのが僕の持論でした。手前味噌ですが、谷繁の目に狂いはなかったな、と(笑)。
ただ、大谷がいようが、吉田がいようが、野球は絶対に個人の活躍だけでは勝てません。特定の誰かではなく侍ジャパンというチームが「世界一」になったわけですから、出場機会が少なかった選手も含めて、その一員だったことを誇りに思ってほしいですね。