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「ヌートバーのスイングは“面を長く使える打ち方”」谷繁元信が語る日韓戦の勝因と“村上宗隆へのエール”「たしかに調子は悪い。ただ…」
text by
谷繁元信Motonobu Tanishige
photograph byNaoya Sanuki
posted2023/03/11 17:02
WBC2試合を終えて打率5割、守備でも好プレーを連発しているラーズ・ヌートバー。谷繁元信氏は「MLBでももっと打率を残せる」と太鼓判を押す
ダルビッシュが被弾した2ランの配球を分析
ダルビッシュが梁義智に2ランを打たれた場面ですが、あれはバッテリーからすると難しいんですよ。結果的に打たれはしましたが、「見逃し三振をとろう」という意図がすごく伝わるボールではありました。配球を振り返ると、右方向を意識している様子の右打者に対して、外角を続けたあと、5球目にインサイドにツーシームを放り込んでファウル。あそこで中村は「内角からスライダーを曲げていけば見逃し三振がとれるな」と感じたんでしょう。しかしキャッチャーでもある梁に配球を予測されていたのか、完璧に打たれてしまった。あれはもう「読み勝ち」した相手を褒めるしかありませんね。
あの2ランは仕方ないとして、個人的には3点目につながった村上の悪送球のほうが痛かった。「バットで貢献できていない」という意識も、あのミスにつながっていたのかもしれません。
ダルビッシュの投球そのものは、そこまで悪くなかったと思いますよ。まっすぐも150kmちょっとは出ていたし、スライダーでもストライクをとれていた。腕もしっかり振れている印象でした。ここまで実戦なしで、ライブBPに少し登板しただけですからね。本人も「次はもう少し上げていける」と感じているんじゃないでしょうか。
「面を長く使える」ヌートバーのスイング軌道
走攻守に大活躍だったヌートバーは、もう完璧にファンに認められましたね。実際、それだけのプレーをしていますから。2試合連続のマルチヒットに素晴らしいダイビングキャッチ、アグレッシブな走塁……。デッドボールを受けたときの戦う姿勢もよかった。しかも、それがまったくわざとらしくない。大げさなパフォーマンスではなく、ごく自然にやっている姿がまた魅力的なんですよね。
あらためてヌートバーの打撃を見ていると、バットの軌道が「面を長く使える打ち方」なんですよ。レベル(水平)にスイングしている時間が長く、それだけコンタクトする確率も、ヒットゾーンに飛んでいく確率も高い。カージナルスではまだ実質1年ちょっとしかプレーしていませんが、去年の後半から一気に成績を上げてきている。昨季より今季、今季より来季と、MLBでも間違いなくもっと打率を残せるバッターだと思います。
近藤はみなさんも知っている通り、「これが近藤です」というさすがのバッティング。吉田も本当に頼りになりますね。そして大谷は……強化試合で泳ぎながらバックスクリーンに運んだときにも思いましたが、やっぱり次元が違いますよ(笑)。野球の世界の大きなピラミッドの頂点、まさしくトップオブトップの存在なんだな、と。これまでの活躍も「実力通り」というほかはないですね。