- #1
- #2
格闘技PRESSBACK NUMBER
「練習で高校生にボコられることも」「ロシアで酷い目に…」54歳の元修斗王者・大石真丈が、それでも総合格闘技を“やめられない”ワケ
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2023/02/04 17:02
2001年11月、修斗フェザー級(現バンタム級)王者に輝いた大石真丈。当時まだ生まれていなかった選手とも練習で拳を交えているという
「2戦目に負けた後に勤めていた会社をやめて、途中で格闘技までやめたらただのアホだと思った、って話したじゃないですか。そういう意味で、自分の中ではまだ“途中”なんです。納得したらやめますよ。心からやり切ったと思えたら……」
サッカーの三浦知良をはじめ、他の競技にも現役を長く続ける選手がいるが、「いやいや、比べること自体がおこがましい話です」と大石は謙遜する。
「たとえばボクシングは年齢制限がありますし、他の競技はチームとの契約があったりするけど、総合格闘技は試合のオファーがあるかぎり自分で決められる。だってカズさんってポルトガルに行くんですよね? この年齢になって、海外で挑戦するのは本当にすげえなと思います。サッカーは競技人口も圧倒的に多いし、完全なアスリート競技で、カズさんはその中で頂点を極めた偉大な選手。俺はちょっと頑張ったくらいの普通の人ですから(笑)」
すでに次の試合のオファーも
2022年に2連敗を喫し、否が応でも進退について考えることが増えたという。
「防戦一方で試合になっていないのは、相手にもお客さんにも周りにも申し訳ないこと。やっぱり、この年齢で連敗するのは堪えますね……。ただ、今年11月でデビューから30年なんですよ。そこまでやったら自分でもたいしたもんだな、と。だからもうちょっと頑張りたい。身体的なダメージはまったくないので」
大石は「試合のオファーが来なくなったら必然的に引退」とも語った。「次の試合は決まりましたか」と少々意地悪な質問をすると、「ありがたいことに、すでにオファーはもらっています」と嬉しそうに明かしてくれた。
取材の翌日、大石から連絡があった。「ひとつ大事なことを話しそびれたのですが」から始まるその文面には、格闘技を通じて出会った人々や関係者、ファンへの感謝が真摯に綴られていた。
大石真丈が修斗の選手として初めてプロのリングに上がったのは1993年11月25日だった。30年後の2023年11月29日、大石は55歳になる。彼が“現役”の格闘家として無事にその日を迎えられると信じているのは、私だけだろうか。
<前編から続く>
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。