格闘技PRESSBACK NUMBER
「あれはスポーツではない」アーネスト・ホーストが“バラエティ化する格闘技”に鳴らす警鐘「少しだけテクニックを覚えた状態は危険」
posted2022/12/30 17:13
text by
布施鋼治Koji Fuse
photograph by
Koji Fuse
「キックボクシングのイベントで東京ドームが満員になったと聞いて驚いたよ。キックボクシングは日本でスポーツとして認知されている。かつて東京ドームで闘ってきた者からすれば、最高のニュースだ」
2022年のベストバウトといっても過言ではない那須川天心vs.武尊が組まれた『THE MATCH 2022』(6月19日・東京ドーム)の話題を振ると、アーネスト・ホーストは相好を崩した。12月19日、名古屋中心部にある「アーネスト・ホーストジムJAPAN」。前日に名古屋国際会議場で行われたキックボクシング大会『Hoost Cup』に、ホーストはウィットネスとして来日していた。
「昨日は激しいファイトが多かったので、素晴らしい大会だった。残念だったのは私の弟子サンティーノ・ヴェルビークが敗れてしまったことだけだ。敗因? 彼はタイムラグとも闘っていたことだろうね。現役時代の私ももし時差ボケがなければ、最低あと3回は『K-1 WORLD GP』で優勝していたと思う」
「私の現役時代と比べたら、ヘビー級の層は薄い」
知っての通り、ホーストは『K-1 WORLD GP』で史上最多タイとなる4度も優勝している。1997年から2006年まで東京ドームで10年連続開催された決勝トーナメントは、その年の格闘技シーンのハイライトだった。しかしながら旧K-1が活動を休止したことで、ヘビー級キックボクサーの活躍の場は日本からヨーロッパに戻ってしまう。
現在はヨーロッパ各地でビッグマッチを打つ『GLORY』にヘビー級のトップどころは集結している。ホーストは「いまだったら日本でもファイトしたことがあるリコ・ベホーベンがベスト」と切り出した。
「もうひとりあげるとするなら、アントニオ・プラチバット。彼は『K-1 WORLD GP』の記念すべき第1回となった93年大会の決勝で私と争ったブランコ・シカティックの教え子だ」
57歳のホーストからみれば、30代のリコと20代のプラチバットはまるで子供のような世代に映る。
「リコは新世代と旧世代のちょうど真ん中で、プラチバットは完全に新世代だろうね。ただ私の現役時代と比べたら、ヘビー級の選手層は明らかに薄くなっていると思う」