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格闘技PRESSBACK NUMBER
「練習で高校生にボコられることも」「ロシアで酷い目に…」54歳の元修斗王者・大石真丈が、それでも総合格闘技を“やめられない”ワケ
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2023/02/04 17:02
2001年11月、修斗フェザー級(現バンタム級)王者に輝いた大石真丈。当時まだ生まれていなかった選手とも練習で拳を交えているという
そんな体験も楽しそうに振り返るのが大石らしい。
「帰国後、顔にプレートを埋める手術をしました。今だから笑えますが、マジで酷い目にあいましたよ。でも海外の試合は、普通に生きていたら味わえない貴重な経験です。飛行機に預けた試合用のパンツが届かないこともありましたね。まあマウスピースさえあれば試合はできますから。ロシアでのファイト以降は、何があっても動じなくなりました」
自身のタイトルマッチ前に“神の子”が大乱闘
日本でも騒動の現場に居合わせたことがある。2002年9月、大石のジムの後輩でアレッシャンドリ・フランカ・ノゲイラにも勝ったことがある勝田哲夫が、故・山本“KID”徳郁さんと対戦した時のことだ。
「勝田が文体(横浜文化体育館)で徳郁とやった試合はマジでやばかったですね」
試合はKIDがレフェリーストップで勝利。しかし終了のゴングが鳴った後もKIDは攻撃を止めず、双方のセコンドが入り混じった乱闘になった。メインイベントに組まれた初の防衛戦に備えるため、大石は控室にいた。
「控室に誰もいなくなっちゃって『うわ、大変なことが起きてるな』と。自分は舞台裏から見ていて、止めに行きたかったけど、試合前だったんでちょっとやめた方がいいなと。徳郁も(木口道場で)子供のころから知っていたし、何やってんだよと……」
リング内外で数十人の大乱闘になり、最後はKIDのセコンドのエンセン井上と勝田のセコンドの佐藤ルミナが、ようやくこの騒動を治めた。
「自分の中ではまだ“途中”なんです」
修斗ではフェザー級(現バンタム級)のベルトを巻いた。ZSTでは65キロの、CAGE FORCEでは61キロの王者決定トーナメントに出場し、決勝まで勝ち進んだ。実績的にも経験的にもきわめて濃密なキャリアを送ってきた大石だが、指導者への転身や、自分のジムを持つことを考えることはないのだろうか。
「練習していると、人に教えるよりも自分が試合をしたくなるんですよ。だからたぶん、指導者にはなれないですね。それに、随分前から会社員としても働いています。格闘技に理解のある会社なので、試合に合わせて休みも取れますし、社会保障も充実していますね」
大石は特定のジムに所属せず、フリーという形で試合を続けている。所属ジムがある場合は会長から引退勧告を受けることもあるが、彼の場合は本人が進退を決めることになる。核心である「格闘技を続ける理由と、キャリアの終え方」について、あらためて尋ねてみた。