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格闘技PRESSBACK NUMBER
「練習で高校生にボコられることも」「ロシアで酷い目に…」54歳の元修斗王者・大石真丈が、それでも総合格闘技を“やめられない”ワケ
text by
長尾迪Susumu Nagao
photograph bySusumu Nagao
posted2023/02/04 17:02
2001年11月、修斗フェザー級(現バンタム級)王者に輝いた大石真丈。当時まだ生まれていなかった選手とも練習で拳を交えているという
「見たことがないので、なんとも思わないですね。出たい人は出たらいいし、見たい人は見たらいい。ひとつのジャンルとしてはアリといえばアリなんでしょうけど、輩みたいなイメージを植え付けるのは勘弁してほしいですね。格闘技なんて、俺が始めたときはイカつい選手はほとんどいなくて、純粋に競技をしたい選手ばかりだった。いつからこういう流れになったんだろうな……。もし自分が出たら? 1分間じゃ相手の勢いに飲まれて、そのまま終わっちゃうんじゃないですか(笑)。でも、駆け引きがない試合は面白くないですよ」
ロシアでの恐怖体験「このまま埋められるんじゃ…」
大石は64戦のキャリアを通じて、リトアニア、ロシア、オーストラリア、ブラジル、韓国と、海外でも多くの試合を行なっている。その中でも特に印象的だった国は、2011年に訪れたロシアだという。
「試合当日に車で8時間、ハバロフスクからブラゴヴェシチェンスクまで移動しました。河を挟んで向こう側は中国の黒龍江省ですよ。しかも屋外での試合で、対戦相手の計量なんて見てないですから」
試合は大石のKO負けだった。1年後の2012年にもロシアで再戦したが、この試合で過去最大のダメージを負うことになる。
「この時はハバロフスクからユジノサハリンスクに飛行機で移動しました。計量に到着すると、相手は4キロオーバー。『どうする?』と聞かれましたが、ファイトマネーを上乗せして対戦を受けました。試合をするために行ったんですから、相手が何キロだろうが、こっちは勝つ気でしかいない。肝心の試合はバックキック、パンチ、最後は飛び膝でKO負け。試合直後から顎がカクカクしていて、自分でも折れているのが分かった。でも、現地のドクターは『大丈夫、大丈夫』って(笑)。『ええ……』と思いながら控室に戻りました」
そこからの流れはちょっとしたホラーだった。
「次に試合をしたロシア人の選手が血だるまになって、病院へ搬送されることになったんです。『お前も病院へ行け』と言われて、ボロボロのバンみたいな救急車に乗ったけど、街灯なんてまったくない真っ暗闇の白樺林をひたすら走って、何処に連れていかれるのか不安で不安で……。一緒に乗っている選手は血だらけで『うー、うー』と唸っているだけだし。このまま二人とも捨てられて山に埋められるんじゃないか、と本気で思いました。結局、ちゃんと病院には連れていってもらえたんですけどね(笑)」