「こんな年齢ですけど、試合への恐怖心はまったくないです。緊張もしなくなりました。だってどの選手もレミーガ（レミギウス・モリカビュチス）より怖くないし、コブリンヤ（ブラジルの柔術家）よりも上手いやつはいない。ただただ試合が楽しみだから、やめられないんです。そもそも趣味で始めて、たまたまプロになった。今もその延長ですから。好きだから続いているだけですよ。経験上、『チャンピオンになる』とイキがって入門するやつほどすぐやめるので」

2005年1月、ZSTのフェザー級トーナメント決勝でレミギウスに組み付く大石真丈　©Susumu Nagao

若い選手からすれば「格闘技が好きなただのおっさん」

　とはいえ、MMAのレベルは年々向上している。大石も「この競技はまだまだ発展途上で、変わってゆく最中でしょうね」と冷静に分析した。

「自分が始めた頃と比べると、技術体系が違ってきています。間違いなく今のほうがレベルは高い。若い選手に『この技はどうやってやるの？』と教えてもらったりもしますね。練習で高校生とかにボコられることもありますよ。『おいおい、ウソだろ』って（笑）。やっぱり子供の頃から総合をやっている選手は強い。MMAもレスリングやボクシングと同じような競技になってきましたね。そもそも、出稽古先のジムの若い子は俺のことを知らないと思いますよ。格闘技が好きなただのおっさんに見えているでしょうね（笑）」

2019年3月、韓国の興行AFGCで見せた変形シザースチョーク。50歳にして見事な一本勝ちを収めた　©Susumu Nagao

　体力的には遅れをとる若い選手相手にも、「試合では勝つ自信がある」と大石は言う。勝敗を分けるのは、なにも腕力や技術だけではない、と。

「言い方は悪いかもしれませんが、格闘技は馬鹿じゃあ勝てないですよ。練習で強くても試合では勝てない。相手の弱点を見つけられないから。データがまったくない選手と戦っていても、頭がいい選手は試合中に相手の弱点を見つけられる。フィジカル的に強くても勝ちきれない選手はそこが足りない。賢いやつのほうが、試合では強い。無名な選手でも、話していて『こいつは賢いな』と感じる選手は大成することが多いですね」

　大石が修斗で王者だった時代から約20年が経ち、格闘技界の勢力図は大きく様変わりした。このところ人気を博している『BreakingDown』のようなイベントに対して、思うところはないのだろうか。

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