- #1
- #2
サッカー日本代表PRESSBACK NUMBER
田中碧の逆転ゴールに中村憲剛は「ああ、やっぱり碧か」 スペイン撃破に貢献した“川崎F勢”に感慨「僕の知っている谷口彰悟が…」
text by
中村憲剛+戸塚啓Kengo Nakamura + Kei Totsuka
photograph byJIJI PRESS
posted2022/12/05 11:20
スペイン撃破に大きく貢献した谷口彰悟、田中碧、三笘薫。川崎フロンターレで共にプレーした選手たちの活躍に、中村憲剛氏は何を思ったのか
多くのタスクをこなした前田大然の献身性
僕自身はビハインドを背負っているものの、徐々に日本のペースになっていると感じていました。リードしたスペインが形を大きく変えてまで攻めてこないこともあり、日本が準備してきた守備の形が徐々に合い、連動がスムーズになっていたからです。
4-3-3のスペインに5-4-1で向き合うと、システムが噛み合わないことで「隙間」が生まれてきます。そこを抑えるために、1トップで起用された前田大然が大きな役割を担っていました。持ち前のスプリントと運動量で、アンカーのセルヒオ・ブスケッツを消すというスペイン攻略の大前提を満たしてくれました。
両チームのシステムの構造上、中盤の中央は守田英正と田中碧のふたりに対して、ペドリ、ガビ、ブスケッツの3人になり、ふたりがペドリとガビを気にしすぎるとブスケッツが浮きます。それを牽制するためにどちらかがブスケッツのマークに出ると、その背後にいるペドリとガビのどちらかにパスを出されて、攻め込まれてしまいます。
この中盤の駆け引きで、序盤はかなり苦しんでいました。守田と田中からすると、ブスケッツへ寄せにいった局面では後ろにいる谷口彰悟と板倉にペドリとガビに対する援軍を頼みたいのですが、彼らには彼らで持ち場があります。谷口と板倉も、早いタイミングで自分のポジションを離れるわけにはいきません。
この状況を改善したのが前田です。相手のビルドアップ時はCBふたりを自分の前に置いて牽制しつつ、守田と田中がブスケッツにつり出されないように、背後のコースを消す。さらに、機を見て守備のスイッチを入れる作業を、運動量を活かして丹念に行なってくれました。
前半途中からは、守田と田中がそこまでつり出されなくなりましたし、同時に3ラインもかなりコンパクトになり、ふたりがスイッチを入れると谷口と板倉が連動してペドリとガビへプレスにいきやすくなりました。
前田に課せられたタスクは守備だけではなく、攻撃時に最終ラインの背後へランニングして相手を押し下げることや、前線で起点になるなど攻守にやるべきことは多かったと思います。素晴らしい献身性とスプリント力で、チームに大きく貢献していました。
2シャドーの鎌田大地と久保建英も、難しい守備のタスクを担っていました。フリーでプレーしようとするCB、自分の背後にポジションを取ろうとしてくるペドリとガビ、そして自分のラインを越える絶妙な立ち位置を取ろうとするSBと、ケアするべきエリアがかなり広くなっていました。それらをカバーするのはかなり大変だったと思います。久保は前半で交代しましたが、非常にタフにプレーしてくれました。個々の献身性がチームの連帯感につながったことで、後半の逆転劇につながっていくのです。