堂安律、三笘薫の投入でアクセル全開に

　自分たちが用意してきた守り方は前半のうちにアジャストしていき、整理されていきました。危ないシーンは少なくなったとはいえ、スペインの巧みなパスワークの前になかなか狙いどおりにボールを奪えずに、選手たちもストレスを感じる時間が多かったとは思います。それでも、0対1ならOKという共通認識に立ち、チーム全体で狙いを持った戦い方ができていたように見えました。

　守備に手応えをつかめてきたなかで、次は「どう得点を取るのか」です。その答えは後半開始後、すぐに出ます。

　堂安律と三笘薫を投入して、日本は一気にアクセルを踏み込みました。久保に代わった堂安はそのまま右シャドーに入り、長友に代わった三笘も同じ左ウイングバックでしたが、左CBの谷口がより高い位置へ三笘を押し出していたように見えました。

ドイツ戦に続き、スペイン戦でも同点ゴールを決めた堂安律　©Kiichi Matsumoto/JMPA

　1点目は自陣から前に出したボールが相手CBのロドリにわたり、そこへ前田がプレスを仕掛けます。ロドリがもうひとりのCBパウ・トーレスに下げると、前田が相手陣内に入る形で2度追いします。パウ・トーレスからGKウナイ・シモンへのバックパスを、前田が3度追いして相手を押し下げることで、全員が前向きで連動できる状態が作られました。

　前田がウナイ・シモンへプレスをかける間に、フォローに入ろうとするブスケッツには田中がつき、縦パスを出させないようにしていました。それを見たウナイ・シモンはロドリへ横パスしますが、そこには鎌田が連動し、ロドリから斜め前にいる右SBのダニエル・カルバハルへボールが渡った時には、三笘が少しアプローチの距離が長かったもののパスコースを限定するのではなく、ボールを奪うための迫力あるプレスで襲いかかりました。

　ここで奪えればベストでしたが、奪えなかったもののそこから三笘がプレスの勢いを生かして2度追いすることで連動が継続され、ウナイ・シモンにボールが渡ったときには前田がプレスをかけつつ、堂安がパウ・トーレス、守田がペドリへのパスコースを牽制しています。それを見たウナイ・シモンは、空いている左SBのアレックス・バルデに浮いたパスを出しますが、ボールが浮いている間に右ウイングバックの伊東が距離を詰めていました。

堂安律の同点ゴールの直前、バルデとの距離を詰める伊東純也　©Takuya Sugiyama/JMPA

　バルデと競り合ってボールを前へ跳ね返すと、それを収めた堂安が迷わずに左足を振り抜いた。素晴らしい連動からの、素晴らしいゴールです。前半の日本のイメージがあったのか、スペインは虚をつかれた形になりました。

　連動した守備は、前半から何回かありました。しかし、前線からのプレスに両ウイングバックを含めた全員が連動し、ここまでうまくハメてボールを奪えたのは、この場面が初めてだったのではないでしょうか。

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