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「野球のリリーフのように」森保監督のカードは攻撃だけじゃない! スペインを機能停止にした冨安健洋と遠藤航の“守備ジョーカー投入”
posted2022/12/03 17:27
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
Takuya Sugiyama/JMPA
こうも鮮やかな逆転勝利が続くと、あえてビハインドを背負っているように思えてくる。
もちろん、世界中のどこを探しても、リードを許すことを善しとするチームはないだろう。
ただ、心理面を考えると、あながち悪い方策ではないのかもしれない。「攻めるしかない」という背水の状況がピッチ内の意思を統一し、モチベーションを一層高めてくれるからだ。
0-0でゲームを進めながら、相手が出てきたところで仕留める――そんな集団としての駆け引きが必要とされるコスタリカ戦のような展開のほうが、日本人はむしろ苦手とするところだろう。
交代枠5人について森保監督が語っていたこと
とはいえ、後半から試合の様相をガラリと一変させられるのも、ゲームの流れを変えられる“ジョーカー”が、今の日本代表には豊富に揃っているからだ。
「どうしても先発組とベンチスタート組に分かれますが、選手たち自身はレギュラー組と控え組とは捉えていないと思います。先に出るのか、後から出るのかの違いだと。ベンチスタートに回ったからといって、対戦相手との兼ね合いや戦略的な理由でそうなっただけで、先発した選手より劣っているわけではないと。みんながそうした自信を持っていると感じるし、私自身もレギュラーとサブだとは思っていない」
森保一監督がそう語ったのは、カタールW杯開幕直前のことである。さらに、ゲームプランに関してこうも言った。
「交代枠が5人になるので、攻撃陣は途中で総入れ替えして、90分を通してインテンシティを保ち、相手に圧力をかけ続けるのが今のサッカーの流れだと思います」
交代策を見ると、ドイツ戦ではまず浅野拓磨と三笘薫が送り出され、続いて堂安律、南野拓実が投入された。コスタリカ戦では浅野、三笘、伊東純也、南野が攻撃のカードとして切られた。
そしてスペイン戦では初戦を再現するかのように堂安、三笘、浅野がピッチに放たれ、堂安が同点ゴールを決めると、三笘が逆転ゴールをアシストした。
守備カードの切り方が鮮やかだった理由
ただ、グループステージ突破を決めた第3戦で唸らされたのは、そうしたジョーカーの使い方ではない。
鮮やかだったのは、守備のカードの切り方だ。