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立役者・堂安律の“熱い言葉”に未出場シュミットが「もっと頑張ろう」と感激…同じ立場の柴崎岳、川島永嗣も思い描く「新たな歴史」
posted2022/12/05 17:29
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph by
JIJI PRESS
森保ジャパンのなかで最もギラギラ感を前面に出してきた男と言えば、堂安律である。
だが、カタールの地で劇的ゴールを連発した今、その発言内容が少し変わってきた。これまでの日本代表で、W杯1大会で3ゴールを記録した選手はいない。堂安は記録更新に王手をかけているが、あくまでフォア・ザ・チームを強調する。
「ゴールはうれしいですし、個人的な記録はもちろん超えられればうれしいですけど、今はそれほど考えてなくて。本当に2点取ったことも忘れて、今日からトレーニングしていますし、まずはベスト16の壁を越えたいという思いのほうが強いです」
スペイン戦から束の間のオフを挟んでトレーニングが再開された12月3日の練習後、ミックスゾーンに姿を現した堂安はそう話した。
「11対11ですけど、僕たちは26対11で戦っている」
森保一監督は選手たちが先発組とベンチスタート組に分かれたとしても、レギュラーと控えではないと明言しているが、堂安自身も同意する。
「僕たち本人もそれは感じていて。11対11ですけど、僕たちは26対11で戦っているイメージです」
アタッカーたるもの、ときにはエゴも必要だろう。俺が絶対に決めてやる、というような。そうした強い気持ちがここまでの堂安のキャリアを切り開いてきたはずだが、今はチームのため、という気持ちが原動力になっているようだ。
それは、舞台がW杯だからなのか、それともこのチームだからなのか。
「いつもはフォア・ザ・チームじゃないみたいじゃないですか」と笑った堂安は、きっぱりとこう言った。
「もう、勝ちたい気持ち、それだけなので。これほど勝ちたいと思うことはないですし、この26人プラススタッフで歴史を変えたいという気持ちが本当に強い」
吉田麻也も「律の代表に懸ける姿勢」を感じ取る
実はドイツ戦で今大会初ゴールを決めるまで、日本代表では3年10カ月もの間、ゴールから遠ざかっていた。その間に右サイドハーフのポジションを伊東純也に譲り、ベンチを温めるゲームも少なくなかった。
「律も代表でなかなかうまくいかない時期もありましたけど、今年に入って代表に懸ける姿勢がちょっと変わってきたなと思っていた」
キャプテンの吉田麻也が指摘するように、代表から気持ちが離れかけた時期があったのは確かだろう。実際に、アジア最終予選の終盤には代表チームから外れてもいる。
そんな男が口にした「26人で戦っている」という言葉――。もしかしたら、その境地こそが、W杯でのゴール以上に貴重な財産になるかもしれない。
さらに堂安は次戦で出場停止となる板倉滉について、こんなふうに語った。