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井上尚弥の“脳を揺らすカウンター”で「終わりが近い」じつは2ラウンドにあった予兆…世界的カメラマン“確信の1枚”「増えた筋肉…ものすごいカラダに」―2025上半期 BEST5
posted2025/05/05 11:00

キム・イェジュンの顔に左フックをヒットさせる井上尚弥。世界的ボクシングカメラマンの福田直樹氏は“異例の一戦”をどう見たのか
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福田直樹Naoki Fukuda
photograph by
Naoki Fukuda
2024ー25年の期間内(対象:2024年12月~2025年4月)まで、NumberWebで反響の大きかった記事ベスト5を発表します。井上尚弥部門の第3位は、こちら!(初公開日 2025年1月30日/肩書などはすべて当時)。
井上尚弥「正直きつかった」異例の経緯を辿った一戦
今回の井上選手の試合を語るうえで、試合が1カ月延期になったことに触れないわけにはいきません。昨年12月4日の公開練習の時点で十分に仕上がっていたにもかかわらず、延期になって再調整を強いられた。そして13日前に、サム・グッドマン選手からキム・イェジュン選手に対戦相手が変わった。試合後に珍しく「正直きつかった」と話していたように、メンタル的にも戦略的にも、決して簡単なことではなかったと思います。
対戦相手が変更になるまでずっと「グッドマン漬け」になって綿密に作戦を練っていたのに、急きょオーソドックスの相手(グッドマン)からスイッチもできる変則的なサウスポー(キム)に変わったわけですから、準備してきたものの大部分は見直しを迫られたはずです。スピードも違えばボクサーとしてのタイプも違う。普通ならもらわないタイミングで軽くパンチを被弾していたのも、実力差のわりに時間をかけて攻め落としていったのも、おそらくそれが原因でしょう。
対戦相手の変更は約2週前ですから、付け焼き刃で対策するのはむしろ危険だと考えたのでは。それよりも、会見で言っていたように「自分が今まで築き上げてきたもので戦う」と。映像はざっとチェックしていたそうですが、ほぼアドリブというか、実際の試合のなかで学習して組み立てていくことに重きを置いていたように感じました。