Jをめぐる冒険BACK NUMBER
「野球のリリーフのように」森保監督のカードは攻撃だけじゃない! スペインを機能停止にした冨安健洋と遠藤航の“守備ジョーカー投入”
text by
飯尾篤史Atsushi Iio
photograph byTakuya Sugiyama/JMPA
posted2022/12/03 17:27
ジョルディ・アルバをケアする冨安健洋。アンス・ファティも投入されたスペインの「左」を封鎖した
68分、スペインのベンチが動く。
ピッチサイドで準備をしているのは、左サイドバックのジョルディ・アルバと、左ウイングに入ることが想定されるアンス・ファティだ。日本の右サイドへの攻勢を強めたいのは、明らかだった。
すると、すかさず日本のベンチも動く。
同じく68分に、負傷から復帰したばかりでベンチスタートとなっていたDF冨安健洋を右ウイングバックに送り込んだのだ。
「出るなら右ウイングバックだな」
「状況的に、出るなら右ウイングバックだなと想定していたので、問題なく入れました」
冨安がそう振り返れば、指揮官もその狙いを明かす。
「リードしたらトミの力を借りて試合を締めようということは考えていました。起用については悩みました。3人のセンターバックがイエローをもらっていたので、どこまで我慢すべきかと。
退場者が出るかもしれないなかでの決断だったので難しかった。交代を決断したのは、スペインが左サイドの攻撃を強めるカードを切ろうとしていたからです。守備をしっかり固めて相手の攻撃を受け止め、ボールを奪って攻撃に転じたいと」
「思った以上に回復した」遠藤がスタンバイしていた
こうして右サイドに蓋をして相手の反撃の芽を摘み取ると、87分には中央をさらに締めるために、2枚目の守備のカードを切る。
コスタリカ戦で右ひざを負傷したため、ベンチスタートとなった遠藤航である。
コスタリカ戦後に診察を受けた遠藤はスペイン戦までの3日間、ホテルでの静養や室内での調整を余儀なくされ、トレーニングに参加することができなかった。だが、「思った以上に回復した」ことから、スタンバイしていたのだ。
ゲーム終盤に田中碧と代わってボランチに入った遠藤が振り返る。
「(自分が欠場することで)チームへの不安はなかったですね。いい選手が揃っているので。7、8割の状態まで戻ってきている。今回は他の選手に託して、自分はラウンド16でしっかりプレーできる状態にしたほうがいいと。そういう意味でも、碧には『1点リードしていたら、俺が締めるから』とずっと言っていました」
日本の強固な5-4-1の守備ブロックは、スペインに崩されることがなかった。
森保監督は選手の交代策と個々の役割について、野球を持ち出して説明した。