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井上尚弥を“苦しめた敗者”カルデナスに新事実…じつは「井上のスパーリングパートナー候補」だった男は、なぜ怪物からダウンを奪えたか?
posted2025/05/08 11:03

戦前の予想を覆し、王者・井上尚弥からダウンを奪うなど果敢な闘いを見せた挑戦者カルデナス
text by

渋谷淳Jun Shibuya
photograph by
Hiroaki Yamaguchi
5月4日(日本時間5日)、米ラスベガスのT-モバイル・アリーナで行われたスーパーバンタム級4団体タイトルマッチは、統一王者の井上尚弥(大橋)が挑戦者のWBA1位ラモン・カルデナス(米)との熱戦を8回45秒TKOで制して王座を守った。試合を面白くした背景には、アグレッシブなファイトで公約通りのKO防衛をはたした井上のみならず、王者に食らいついたカルデナスの奮闘があった。
じつは「井上のスパーリングパートナー」候補だった
メキシコ系アメリカ人、29歳のカルデナスはモンスターの挑戦者として物足りないと見られていた。無理もない。世界タイトルマッチは初挑戦で、ビッグネームとの対戦もないのだ。ニックネームは「ダイナマイト」というから爆発力はあるのだろうが、井上を脅かす存在になると見ていた関係者はわずかだったに違いない。
そもそも今回の防衛戦は、WBC1位にランクされる無敗のアラン・ピカソが有力な挑戦者と見られていた。試合はメキシコ戦勝記念日「シンコ・デ・マヨ」に合わせて行われる恒例のビッグイベントである。そうした意味からもメキシカンのピカソが井上の相手に最適だと思われていたのだ。
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ところがピカソとの契約は合意に達せず、紆余曲折をへて白羽の矢が立ったのが無名のカルデナスだった。スパーリングパートナーの手配などを行う北米のコーディネーターは「無名ですけど骨のある実力者なので、実は井上選手のパートナーにどうかなと考えていました。最近の井上選手はサウスポーとの対戦が多かったので実現しませんでしたが、まさか挑戦者になるとは思っていませんでした」と明かす。