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敗者カルデナスの誤算“じつは井上尚弥にバレていた”動揺「なぜ連打されながら笑ったのか?」カメラマンが見た“井上の表情”「イーッと歯を…珍しい1枚」
posted2025/05/09 11:06

井上尚弥にTKOで敗れたカルデナス
text by

曹宇鉉Uhyon Cho
photograph by
Hiroaki Finito Yamaguchi
◆◆◆
井上尚弥“あの衝撃ダウン”裏側
――井上選手がダウンした2ラウンド。リングサイドで撮影していた山口さんの目には、両者の思惑はどう映っていましたか?
山口裕朗(以下、山口) 1ラウンドに続いて、カルデナスが「ビビらずに前に出よう」という意志を見せていました。尚弥選手からすると「来てくれるなら倒せるかも」と思ったのかもしれません。それもあって、2ラウンドだけは「ちょっと雑に攻めているな」という印象がありました。
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――カルデナスが前進してきたことで、井上選手も早期KOを意識した可能性が……。
山口 尚弥選手のジャブは右ストレートのような破壊力がありますからね。スピードも全然違いましたし、完全にペースを握るまで左でじわじわとダメージを蓄積させるとか、絶対に被弾しないような組み立てもやろうと思えばできたはず。もちろん強いパンチで威嚇するというのも戦略のひとつだと思いますが、それでもちょっと、この2ラウンドに関しては攻め急いでいるように見えました。もしかしたら、ラスベガスという舞台装置も手伝って、「俺が見せなきゃ」という気持ちがどこかにあったのかもしれません。
――攻勢に出た井上選手の打ち終わりにカルデナスがノールックの左フックを合わせて、驚きのダウンシーンが生まれました。
山口 カルデナスからすれば、あのカウンターを当てる以外に勝機はなかった。そのためには、とにかくビビらないこと。ビビらずに、勇気を持って打ちにいく。それを実践できるハートの持ち主だったということですよね。試合前は無名の挑戦者だったかもしれませんが、すごくいい選手だと感じました。
「イーッと歯を…」井上尚弥の“珍しい表情”
――井上選手の思惑とカルデナスの戦略が噛み合った部分はあれど、勇気が生み出したダウンだと。
山口 パンチを食らっても、倒されても、自分のプランを貫く。カルデナスにはその気概がありましたね。「井上尚弥と戦える」という夢のような話が降ってきた。でも高額のファイトマネーで満足せずに、大番狂わせを起こすつもりでリングに上がった。一気にスターダムにのし上がってやると。まさに覚悟ですよね。
――ダウンを喫した井上選手ですが、ダメージはどう見えましたか?