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「まず中小クラブ中田英寿・長友佑都型」「いきなり名門の久保建英・宇佐美貴史型」どっちがいい? “日本人ビッグクラブ移籍後実績”を調べた
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph bySports Graphic Number(L,C)/Getty Images
posted2022/08/01 20:00
長友佑都、中田英寿、久保建英。それぞれの移籍ステップアップを見てみると……?
<MF中田英寿:ベルマーレ平塚→ペルージャ→2000~01年ローマ(40試合6得点)>
日本代表で77試合に出場して11得点。W杯は1998年から3大会連続で出場した。
<SB長友佑都(35):FC東京→チェゼーナ→2011~18年インテル(210試合11得点)>
日本代表で歴代2位の136試合に出場して4得点。W杯は2010年から3大会連続出場中で、今年のカタール大会出場を狙う。
<MF香川真司(33):セレッソ大阪→ドルトムント→2012~14年マンチェスター・ユナイテッド(57試合6得点)>
日本代表では、97試合に出場して31得点。W杯は2014年から2大会連続で出場。
<MF本田圭佑(36):名古屋グランパス→フェンロ→CSKAモスクワ→2014~17年ACミラン(92試合11得点)>
日本代表では98試合に出場して37得点。W杯は2010年から3大会連続で出場。
<CB冨安健洋(23):アビスパ福岡→シント・トロイデン→ボローニャ→2021年~アーセナル(22試合0得点)>
日本代表では28試合に出場して1得点で、現チームの主力の1人。現在の市場価値は、日本人最高の2500万ユーロ(約34億7000万円)。
<FW南野拓実(27):セレッソ大阪→ザルツブルク→2020~22年リバプール(55試合14得点)>
日本代表では42試合に出場して17得点で、現チームの主力の1人。現在の市場価値は1200万ユーロ(約16億6000万円)。
最大の成功例を挙げるとすると……
このうち、最大の成功例は長友だろう。
明治大学中からFC東京の試合に出場し、2008年2月、21歳で正式契約。すぐにレギュラーとなり、3カ月後、日本代表に初招集されて2010年W杯に出場した。
この年7月、23歳でイタリア1部チェゼーナへ期限付き移籍。すぐにポジションを獲得し、わずか半年で完全移籍を勝ち取ると(推定移籍金は160万ユーロ=約2億2000万円)、チェゼーナはすぐに名門インテルへ貸し出す。
インテルでもすぐにレギュラーとなり、欧州チャンピオンズリーグにも出場した。2011年7月、インテルへ完全移籍(推定移籍金は450万ユーロ=約6億2000万円)。以後、7季にわたってプレーした。その後、トルコ、フランスのクラブを経て昨年9月、FC東京へ復帰した。
インテルでポジションを失いかけた時期はあったものの、不屈の闘志で定位置を奪い返した。これほど長い間、欧州ビッグクラブでコンスタントに出場した日本人選手は彼だけだ。
冨安は昨年8月、セリエA(イタリア)のボローニャから推定移籍金1860万ユーロ(約25億8000万円)でアーセナルへ。すぐに右SBのレギュラーポジションをつかんだ。昨年末以降、故障で欠場が増えたが、これまで日本人選手がはね返されてきた名門で健闘している。故障さえなければ、日本代表でも絶対的なレギュラーだ。
ハイレベルなレギュラー争いに苦しんだ過去
中田、香川、本田、南野は欧州の複数クラブで経験と実績を積み、満を持してビッグクラブの門を叩いた。しかし、ハイレベルのレギュラー争いに苦しんだ。一概に失敗とは決めつけられないだろうが、大きな成功を収めたとも言い難い。
つまり、日本から欧州ビッグクラブへ直接移籍した7選手は誰一人として欧州ビッグクラブの戦力になれなかったが、欧州の中小クラブを経由して欧州ビッグクラブへたどり着いた6選手のうち長友と冨安は確かな戦力となりえた(資料1参照)。
ただし、日本人選手だけではサンプル数が少ない。そこで、世界で最も多くの選手を欧州クラブへ送り出し、なおかつ欧州ビッグクラブで最も多くの選手が成功を収めているフットボール大国ブラジル人選手のケースを検証してみたいと考えた。第2、3回で深掘りしていこう。<#2、#3につづく>
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