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「“東大野球部に入ると留年する”って本当ですか?」文武両道の神童たちはどんな進路を歩む? 東大野球部の就職先ランキング《92年~01年編》
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byKYODO
posted2022/06/11 11:01
東大野球部時代の遠藤良平(1999年撮影)。99年ドラフト7位で日本ハム入り。この遠藤の世代を含む「92年~01年」の東大野球部エリートたちの就職先ランキングを調査した
商社マンになるOBも多い。伊藤忠商事(2人)、三井物産(2人)、三菱商事(1人)と大手商社にまんべんなく進んでいる。92年からの10年間に卒部した東大野球部出身の商社マンとして、ビジネス界で知名度が最も高いのは、遊撃手として活躍した佐藤隆史だろうか。99年に東大卒後、三菱商事に入社。2019年に三菱グループである「ローソンストア100」の代表取締役社長に就任している。
「『東大野球部に入ると留年する』という話は本当ですか?」
ただ、実は佐藤の卒部自体は98年。東大野球部では、4年間の野球生活を終えた後、卒業せずに在学を選ぶのは珍しくないのだ。なにしろ、冒頭に挙げたように、卒部生の進路全体の4分の1を占めるのは在学で、130人中32人が該当している。折からの就職氷河期には多くの大学4年生が、翌年に新卒枠で採用試験を受けるためにあえて留年していたが、東大にも就職浪人組が一定数いたはずだ。
また、そうした意図的な留年だけでなく、取得単位不足による不本意な留年もありうるだろう。かつては「東大の練習は六大学で一番厳しい」と恐れられていたこともあり、神童とはいえ、野球と勉学の両立は並大抵ではないことが、この数字からうかがえる。
ただ、これに関連して、東大野球部のウェブサイトには、注目すべき記述がある。受験生や入部希望者からの質問に答えるFAQコーナーがあるのだが、「『東大野球部に入ると留年する』という話は本当ですか?」に対して、「『東大野球部に入ると留年する』というのは嘘です。ほとんどの部員は4年間で卒業し、就職または大学院に進学します。しかし、公務員試験や資格試験に備えるため意図的に留年する部員も若干名います」とのこと。
後段の試験は、国家公務員総合職や、弁護士あるいは公認会計士などを指しているのだろう。東大野球部卒の資格試験組には、いずれ詳しく話を聞いてみたい。
上記のFAQで紹介されていた大学院への進学は、130人中26人。92年~02年までは手元の資料に学生の所属学部の表記がないため一概にはいえないが、03年からの資料を見ると大学院進学組は工学部など理系学部生がほとんどだ。ここから類推すると、92年~01年も同様の傾向だろう。研究職などを目指す理系学生で、かつ日本有数の頭脳を持つ者であれば、大学院進学は当然か。
プロ野球に進んだ1人の“その後”
さて、ここからは、大学を卒業してもなお、プロや社会人で野球を続けた東大野球部OBを紹介していきたい。