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「“東大野球部に入ると留年する”って本当ですか?」文武両道の神童たちはどんな進路を歩む? 東大野球部の就職先ランキング《92年~01年編》
text by
沼澤典史Norifumi Numazawa
photograph byKYODO
posted2022/06/11 11:01
東大野球部時代の遠藤良平(1999年撮影)。99年ドラフト7位で日本ハム入り。この遠藤の世代を含む「92年~01年」の東大野球部エリートたちの就職先ランキングを調査した
そんな時代の荒波のなか、東大野球部の就職組では銀行への入行が14人で最多だ。最も多いのは日本興業銀行(現みずほ銀行)で4人。次いで日本長期信用銀行(現新生銀行)が3人、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)と三和銀行(現三菱UFJ銀行)が2人。そして、日本政策投資銀行(99年より日本開発銀行および北海道東北開発公庫を継承し、設立)と住友銀行(現三井住友銀行)、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)が1人ずつだ。
日本興業銀行と日本長期信用銀行は、日本債券信用銀行(現あおぞら銀行)と並んで「長信銀3行」と呼ばれた高度経済成長の立役者だ。ゆえに、エリート集団という評価も受け、就活生からの人気も高かったという。この長信銀3行のうち2つに、野球部OB7人が進んでいるのは、さすがと言える。
しかし、バブル崩壊により莫大な不良債権を抱え、銀行は軒並み深刻な危機に陥っていく。そのなかでも、東大野球部OBに銀行人気が高かった事実は興味深い。日本長期信用銀行は98年に破綻し、日本興業銀行も第一勧業銀行らと事業統合するなど、激動の金融再編の歴史の中に東大野球部OBは身を投じていたのだ。
また、もともと大学生一般において、高給で鳴らす金融業界への就職人気は高く、東大野球部のなかでも、生保・損保を選んだOBは多い。生保業界トップの日本生命に2人、損保業界トップの東京海上に3人が入っているのは、横綱相撲の就活力である。96年の保険業法改正によって業界は自由化に振れたが、業界ガリバーという大船に乗って、その後も安泰な人生行路を進んでいるのだろうか。
電通(6人)、マスコミ(5人)、商社(5人)…
銀行に次いで就職者が多いのは広告業界(7人)。中でも電通は6人入社と、個別企業としてはトップだ。余談だが、93年に電通代表取締役社長に就任し、その後代表取締役会長、最高顧問、電通グループ会長を歴任した成田豊(故人)も東大野球部OBであった。
広告業界とともにマスコミというくくりで見るならば、テレビと出版あわせて5人(NHK2人、TBS1人、テレビ朝日1人、岩波書店1人)。NHKの東大野球部OBといえば、現在「報道ステーション」のメインキャスターを務めるフリージャーナリストの大越健介氏(85年卒)が有名だが、NHKは東大野球部となじみがいいらしい。22年までを見ても、放送業界に進んだOBの中ではNHKが最多である。