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低迷する名門・早稲田の競走部…それでも監督交代が“降格”ではない理由 新旧監督が目指す「2人で“令和版”の強くて魅力ある早大へ」
text by
和田悟志Satoshi Wada
photograph bySatoshi Wada
posted2022/06/08 17:00
6月1日、早稲田大学駅伝チームの新体制がスタートした
「母校からはめったに声がかかるものではないし、声をかけてもらえるのは良いことだから。上武に来てくれるのなら、もちろんすごくうれしいけど、早稲田に行ったほうがいいと思う」
花田が背中を押してくれたのもあって、さんざん悩んだ末に、相楽は母校復活の力になろうと早稲田のほうのコーチ就任を受諾した。そして、相楽がコーチに就任して2年目にシード権を取り戻すと、そこから早稲田は上昇気流に乗る。2011年の箱根駅伝では、花田が大学3年生だった1993年以来、18年ぶりに総合優勝を果たした。
「もちろん監督の渡辺君の力があってこそですが、相楽君がコーチとしていたことは、総合優勝には大きかったと思いますよ」
他校の監督という立場ながら、花田は相楽のコーチとしての手腕を高く評価していた。
降格ではなく「2人で“令和版”の強くて魅力ある早大へ」
2人は指導者としてそれぞれの道を歩んできたが、今回縁あって、手を携えることになった。
「18年前には縁がなかったけど、またこういうタイミングが来たのは運命かもしれないね。そんなことを相楽君とも話していました」
花田は、相楽との縁を“運命”と表現する。“駅伝監督”という肩書は、相楽から花田へ引き継がれることになったが、2人で一緒にチームを盛り立てていく覚悟だ。
「17年間、このチームに携わってきたので、そういった経験を踏まえて、花田監督にいろいろ提案、協議をしながら、2人で“令和版”の強くて魅力ある早稲田大学競走部を作っていきたい」
新たに“チーム戦略アドバイザー”という肩書が付いた相楽は、こう宣言する。実は、この“チーム戦略アドバイザー”という名称は、花田が提案したものだった。
「上武の時もそうでしたが、自分の判断だけで決めていくというよりも、信頼できる人と相談しながら進めていくというのが自分の理想です。彼はずっと早稲田でやってきていて、いろんなことを知っているので、やっぱり頼れる参謀でいてほしいなと思います」
今年の箱根駅伝で早稲田は13位に終わり、今季は予選会からの出発となる。名門復活へ、チーム再建の道のりは決して生易しいものではないのは、重々承知の上。それでも、ついにタッグを組んだ2人が、どんなチームに作り上げていくのか楽しみだ。