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世界陸上まであと1カ月なのに“参加標準記録突破者ゼロ”…男子100mは負の連鎖を断ち切れるか
posted2022/06/08 11:05
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph by
Getty Images
日本選手権(6月9~12日)を前に男子スプリント勢が“ピンチ”に立たされている。東京五輪が開催された昨年は日本選手権を前に山縣亮太、サニブラウン・アブデル・ハキーム、桐生祥秀、小池祐貴、多田修平の5人が同大会の参加標準記録(10秒05)を突破していた。しかし、今年はオレゴン世界選手権の参加標準記録(10秒05/有効期限は2022年6月26日)を誰もクリアしていないのだ。
オレゴン世界選手権男子100mのターゲットナンバー(出場枠)は「48」と決まっている。参加標準記録はすでに29人(ワイルドカードを除き、1カ国のカウントは3人)がクリア。定員に満たない分は、期限内の5レース平均スコアで算出されるワールドランキングの上位から補填されることになる。現時点(5月29日発表時)で“出場圏内”につけている日本人は桐生ひとりしかいない。
果たして日本の男子100mは大丈夫なのか。
東京五輪の「途中棄権」から断ち切れない“負の連鎖”
昨年は山縣が6月6日の布勢スプリントで9秒95(+2.0)の日本新を樹立して大きく盛り上がった。振り返ると、このときが日本スプリント陣に対する期待値がピークだったように思う。
東京五輪の男子100mは多田、山縣、小池が出場するも3人とも予選で敗退。日本勢が五輪で準決勝進出を逃すのはアテネ大会以来17年ぶりのことだった。メダル獲得が有力視されていた男子4×100mリレーも決勝で痛恨のバトンミスがあり、「途中棄権」に終わっている。
そして今季に入っても日本スプリント陣は“負の連鎖”を断ち切れていない。
日本記録保持者の山縣亮太(セイコー)は以前から痛みのあった右膝を昨年10月に手術。今季はリカバリーに重点を置いており、日本選手権の出場を見送った。100mで10秒03(日本歴代9位)の自己ベストを持つケンブリッジ飛鳥(Nike)は4月26日に乗用車を運転中に事故に巻き込まれたこともあり、コンディション不足のため日本選手権は欠場する。
桐生祥秀(日本生命)は4月24日の出雲陸上を10秒18(+1.5)で快勝するも、右ハムストリングスに痛みが出て、その後のレースを回避。多田修平(住友電工)も4月29日の織田記念予選で左大腿部に違和感が出て、セイコーゴールデングランプリは欠場した。昨年の日本選手権で100mと200mで2位に食い込んだデーデー・ブルーノ(セイコー)も今季ベストは10秒45と調子がなかなか上がらない。