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世界陸上まであと1カ月なのに“参加標準記録突破者ゼロ”…男子100mは負の連鎖を断ち切れるか
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byGetty Images
posted2022/06/08 11:05
日本選手権を前に男子スプリント勢が“ピンチ”に立たされている。1カ月後に迫るオレゴン世界選手権の参加標準記録を誰もクリアしていないのだ
そして国内の主要レースにフル参戦して存在感を見せてきた小池祐貴(住友電工)も苦悩している。今季は米国でシーズンインして、4月1日のスタンフォード招待は予選で10秒21(+2.0)。織田記念A決勝は序盤で遅れるも、50~80m区間で他の選手を圧倒。終盤はスピードを緩めながら10秒49(-3.3)で完勝した。
小池は2019年に9秒98(+0.5)をマークしたが、昨季のシーズンベストは10秒13(+2.0)。昨季は50m以降にスピードが上がらなかったという。そのため今季は世界トップクラスのスプリンターと同じスピード曲線を目指している。
「トップスピードの高さが僕にとって一番大事。その出現期間を40~50mではなく、60~70mまで引っ張っていきたい。世界大会決勝のデータを見ても、間違いなくその方がいいんです。スタートのピッチが上がりすぎると、中盤のトップスピードが下がる傾向があったので、前半のピッチをできるだけ抑えて、中盤以降に最大速度に達するようなレースを心掛けました」
日本陸連科学委員会のデータでも山縣(9秒95)、桐生(9秒98)、小池(9秒98)、多田(10秒01)が自己ベストをマークしたときは、山縣、小池、多田は55m付近、桐生は65m付近で速度がピークに達している。その最高速度は山縣が11.62m/s、小池が11.58m/s、多田が11.52m/s、桐生が11.70m/sだった。
「最高速度で11.60m/s以上を出さないと9秒台はほぼ出ない。僕はスタート(序盤)が遅いことを考えると、もうちょっと求めていきたいですね。走りの型はかたまっているので、好条件が来るのを待とうかなと思っています」
セイコーGPでは2位に入ったが…
期待感を抱かせた小池だったが、織田記念4日後の静岡国際200mは20秒46(-0.4)の4位。20秒34で優勝した飯塚翔太(ミズノ)に完敗した。5月8日のセイコーゴールデングランプリ100mも予選1組が10秒29(-0.3)の3着通過となり、「まずいな」と感じたという。そのため決勝では大幅に方向転換。細かい動きを気にするのではなく、本能のまま駆け抜けた。その結果、10秒22(+0.1)で世界選手権王者のクリスチャン・コールマン(米国)に次ぐ2位に入った。
「最初から最後までがむしゃらに走ったらわりと感触が良かったんです。タイムが出なかったのはちょっと悔しいですけど、連戦の最後なので、今後コンディションを整えていけば参加標準記録は切れるのかな、と前向きに考えています」
ポジティブな言葉を残した小池だが、オレゴン世界選手権の参加標準記録(10秒05)にはちょっと“距離”がある印象だ。