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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「陸上選手よりも速い」野球界のスピードスターの“速さ”を「50m走のタイム」で判断していいのか問題
text by
西尾典文Norifumi Nishio
photograph bySankei Shimbun
posted2022/02/04 11:07
プロ初盗塁を決めるヤクルト並木秀尊。プロ入り前の50m走で「5.32」を記録したことで注目を集めていた
参加した野手全員に対して50メートル走の計測が手動で行われ、並木秀尊(獨協大→ヤクルト)の5.32秒を筆頭に、実に13人もの選手が5秒台のタイムをマークしたのだ。
この時はスタートの合図もなく、選手が走り出したタイミングでストップウォッチを押す形式のため、さらにタイムが出やすくなっていた。
ただ、昨年12月に行われた大学日本代表候補合宿(2020年合宿はコロナ禍で中止)では、スタートのタイミングこそ選手任せながらも、光電管を使用した計測へと変更したことで5秒台をマークした選手は4人へと激減している。ちなみに今年のドラフト1位候補で、二刀流で注目を集めている矢澤宏太(日本体育大)はどちらの合宿にも参加していたが2019年が5.53秒(全体3位)、2021年が5.80秒(全体1位)と0.27秒の差が生まれていた。
「速さ」は各塁への到達タイムで統一するべき?
0.01秒で競い合う陸上選手と比べること自体がお門違いなのだが、今回改めて提案したいのは、野球選手の脚力を示すタイムの指標を「ベースランニング」に統一すべきではないか、ということだ。
スカウト陣が選手を視察する時にストップウォッチであらゆるタイムを計測する姿は20年以上前から見られるが、脚力についての指標として重要視しているのが各塁への到達タイムである。筆者も試合の現場では全選手必ず計測するようにしているが、一塁までの到達タイムは左打者であれば4.00秒、右打者であれば4.30秒を切れば俊足の部類に入ると判断している。またセーフティバントの場合は明らかにスタートが速くなるので、参考記録として扱う必要があるだろう。
筆者がプロでも活躍している俊足自慢の選手がアマチュア時代に記録していたタイムを紹介すると以下のような数字となっている。
周東佑京(ソフトバンク)一塁:3.85秒 三塁:10.98秒
島田海吏(阪神)一塁:3.85秒 二塁:7.53秒
辰己涼介(楽天)一塁:3.81秒
藤原恭大(ロッテ)一塁:3.83秒
小深田大翔(楽天)一塁:3.80秒 二塁:7.47秒
五十幡亮汰(日本ハム)一塁:3.76秒 三塁:10.58秒
並木秀尊(ヤクルト)一塁:3.88秒 ※右打者
これを見ると一塁到達3.8秒台というのがプロでも俊足というレベルであることがよく分かるだろう。右打者でありながら3.88秒をマークしている並木の足もやはり尋常ではない。また、三塁到達タイムで11.00秒を切ることはそうそうあるものではなく、五十幡の10.58秒というのはまさに規格外のものと言える。