- #1
- #2
プロ野球PRESSBACK NUMBER
「陸上選手よりも速い」野球界のスピードスターの“速さ”を「50m走のタイム」で判断していいのか問題
posted2022/02/04 11:07
text by
西尾典文Norifumi Nishio
photograph by
Sankei Shimbun
いよいよキャンプインした今年のプロ野球。オフには現役選手が出演するバラエティー番組も多かったが、その中でも興味深かったのが1月9日に放送された『リポビタンスペシャル 超プロ野球ULTRA』(読売テレビ・日本テレビ系)だ。
番組の最後を飾ったのが塩見泰隆(ヤクルト)、松原聖弥(巨人)、和田康士朗(ロッテ)、小深田大翔(楽天)のスピード自慢の4選手による、いずれも陸上100メートルで「9.98秒」という記録を持つ桐生祥秀、小池祐貴との50メートル走対決だった。
結果は桐生と小池が4人の野球選手を引き離してゴールし、現役スプリンターのスピードを改めて示すものとなった。ちなみにタイムはトップの小池が6.065秒、2位の桐生が6.069秒で、野球選手トップの塩見が6.31秒となっている。
注目したいのは勝敗ではない。野球選手のタイムが“自己申告”のそれと比べると明らかに違っているということだ。塩見の社会人時代が紹介された記事では、50メートル6.0秒と紹介されている(ちなみに、これは野球選手の自己申告としては決して飛び抜けたものではない)。タイムの遅れはテレビ収録なのだから当然といえば当然だが、以前から野球選手の脚力を示すものに「50メートル走」のタイムを使用することに違和感があった。
高校生アンケートでも「5秒台」
3月から始まるセンバツでは、専門誌が合同で行うアンケートに50メートル走のタイムという項目がある。そこで“5秒台”という数字を記載している選手は珍しくない。今年ドラフト2位でヤクルトに入団する丸山和郁は俊足自慢の選手の1人だが、いたるところで『50メートル5秒8の俊足』と紹介されていたことがあった。
決して彼らがタイムを誤魔化しているわけではない。普段、計測するタイムは陸上競技の大会とは異なり、手動によるもののため、どうしても実際のタイムよりかなり速い数字が出てしまうのだ。
その様子を目の当たりにしたのが、2019年に行われた大学日本代表候補合宿である。