野球善哉BACK NUMBER
球界にスター誕生のカギは「トミー・ジョン手術の理解」にある? 西武・岸潤一郎は“野手で復活”、CS対戦のオリックス山崎颯&ロッテ岩下も
posted2022/02/02 17:00
text by
氏原英明Hideaki Ujihara
photograph by
JIJI PRESS
二人が出した最速はともに153キロ。
2021年のちょっとした感動を覚えたシーンでもあった。
“若くして右肘にメスを入れた2人”がCSで…
昨年11月、日本シリーズ進出をかけたパ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)、オリックス対ロッテの第3戦は、若くして右肘にメスを入れたもの同士の投げ合いとなった。
オリックスのマウンドに立ったプロ入り5年目の山崎颯一郎は、19年に右肘靱帯の損傷が発覚、トミー・ジョン手術を受けて20年に復帰した。一方、プロ入り7年になるロッテの剛腕・岩下大輝も、1年目オフの11月に右肘の側副靱帯の再建手術を受けている。
若くして手術を乗り越えた二人がシーズンのクライマックスを争う試合で投げ合ったことは、決して暗い話ではない。
岸「手術のタイミングがちょうど良かった」
昨今の野球界において、肘の靱帯を再建するトミー・ジョン手術の増加が問題となっている。かつては村田兆治さんや桑田真澄さんなど数例にとどまっていたが、年々、増加傾向にあり、若い世代にまで及んでいる。
パドレスのダルビッシュ有投手やエンゼルスの大谷翔平選手は20代の頃にトミー・ジョン手術を受けているし、最近では先述した山崎颯や岩下のようにプロ入りして間もなく肘にメスを入れるケースもある。また、ドラフト前の候補生たちがすでに手術済みというケースも少なくない。
「僕の場合はお医者さんには断裂までしていないから手術なしでも復帰可能と言われたんですけど、大学2年のころは試合に出ていなかったんで、この期間を使ってちゃんと治そうと思って手術をしました。高校時代はコンディショニングにあまり意識を持っていなかったので、肘が張っている状態でも、みんな同じやろって思っていました。僕は手術のタイミングがちょうど良かった」
そう語るのは、昨季、プロ初本塁打をマークするなどの活躍を見せた西武の若手のホープ、岸潤一郎だ。プロ入り2年目にして、西武の外野手争いに参入。3年目の今季はレギュラー奪取を狙う立場にある。