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「指導にも影響している?」エリート選手から未経験者まで…学生時代の監督たちは箱根駅伝をどう戦ったか
text by
酒井政人Masato Sakai
photograph byJIJI PRESS/Yuki Suenaga
posted2022/01/01 17:06
駿河台大学監督の徳本一善は法大OB。それぞれの大学の指揮官たちは学生時代に箱根駅伝で“夢”を追いかけていた
山本監督と同学年になるのが國學院大・前田康弘監督と法大・坪田智夫駅伝監督だ。駒大OBの前田監督は大八木監督がコーチ就任2年目に入学。箱根駅伝は2~4年時(7、7、4区)に出場した。駒大が強くなっていった時代の中心メンバーで、主将を務めた4年時に初優勝を経験している。そのため現在の指導でも恩師・大八木監督の影響が大きい。
法大OBの坪田監督は1年時に5区で15人中14位に沈んだが、3年時は2区で区間3位と好走。4年時は1区を快走した徳本監督からタスキを受け取ると、トップを独走して区間賞を獲得している。なお山本監督、前田監督、坪田監督はレース中にLINEでやり取りすることがあるほど仲がいい。
箱根未経験者の原晋監督「青学大自体もよく知らなかった」
箱根駅伝に一度も出場経験のない指揮官もいる。青学大・原晋監督、神奈川大・大後栄治監督、国士大・添田正美駅伝監督だ。
広島・世羅高出身の原監督が進学したのは愛知の中京大だった。そもそも学生時代に箱根駅伝を目指していない。大学卒業後は広島に戻り、中国電力に入社した。首都圏の大学事情についても疎く、青学大がどれほどのランクの大学なのかも知らなかったという。箱根駅伝に特別な思いはなく、情報もさほど持っていなかった。これが良かったのかもしれない。箱根駅伝への固定観念がなかったこともあり、アイディアマンとしての能力を存分に発揮。他の指揮官とは異なるアプローチでチーム作りや練習メニューを立てるなどして、青学大に5度の栄冠をもたらしている。
日体大OBの大後監督は大学2年時に選手から「マネージャー」に転身。当時の日体大はコーチ不在ともいうべき状況だったため、監督やコーチとしての役割も担った。なお日体大では元東洋大監督の川嶋伸次(現・旭化成コーチ)と元日体大駅伝監督の別府健至(現・日立物流監督)の2学年上になる。
国士大OBの添田監督は学生時代に予選会を一度も突破できなかった。当時、箱根駅伝の出場校は現在より5校少ない15校。添田監督は予選会に4年連続で出場したが、チームの順位は8、7、10、11位だった。学生時代の苦い経験が指導するうえでの基盤となっている。なお添田監督と東洋大・酒井監督は同学年でともに福島県出身。駒大・大八木監督と早大・相楽監督も福島県出身になる。
大学卒業も活躍していた指揮官たち
また大学卒業後、どこのチームで競技を続けたのか。実業団時代の経験も指導者としてのカラーになっている。東洋大・酒井監督と法大・坪田監督はニューイヤー駅伝で「21世紀の駅伝王者」と呼ばれたコニカミノルタの中心選手。酒井監督は3度、坪田監督は5度の日本一を経験している。一方、創価大・榎木監督と明大・山本監督は名門・旭化成に入社したが、ともに思うような活躍はできなかった。また國學院大・前田監督、山梨学大・飯島監督、国士大・添田監督は富士通に所属していた。
最後に今大会に出場する全20校の指揮官たちの箱根駅伝実績を掲載しておくので、ぜひチェックしていただきたい。彼らの現役時代の“思い”を感じながら、箱根駅伝2022を観戦すれば、感動ドラマがより味わい深いものになるだろう。