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《箱根駅伝》大八木監督「日本人トップのプライドを」 駒大エース・田澤廉がヴィンセント(東国大)に挑むうえで欠かせない“突っ込む強さ”
posted2022/01/01 17:07
text by
加藤康博Yasuhiro Kato
photograph by
AFLO
12月4日の日体大長距離競技会10000mで田澤廉(駒澤大3年)は2022年のオレゴン世界選手権の参加標準記録、27分28秒00の突破に挑んだ。
世界を目指すそのフォームにはこれまでにない余裕と自信が漂っていた。ケニア人選手がペースメイクし、最初の1000mを2分43秒で入ると、5000mは13分43秒の通過。狙い通りのハイペースで進む中、田澤は終盤まで表情を崩すことなく、淡々と走り続けた。そして最後はケニア勢とスプリント勝負を展開し、27分23秒44でフィニッシュ。見事に目標達成を果たした。これは日本歴代2位、日本人学生最高(学生歴代2位)の好タイムだ。
「この冬の間に世界選手権標準は絶対突破したいと思っていました。自力で世界で戦うチャンスをつかめて本当に嬉しい」
レース後は感慨深げな表情を見せた田澤。これで代表選出の選考基準をクリアしたわけではないが、そこに大きく近づく快走だった。
トラックでの目標をクリアし、今回の箱根駅伝に挑む。そしてこの大会は世界を見据えるうえで重要なステップとなる。
大八木監督「1年前と走りの違いは歴然」
田澤の成長を見るにはちょうど1年前の12月と比較するのが分かりやすい。昨年も同じ12月4日に日本選手権10000mを走り、27分46秒09で8位に入っている。その時と走りの違いは歴然だと駒澤大、大八木弘明監督は話す。
「体幹部分が強くなりました。下半身もだいぶ太くなったようで、スピード自体が上がりましたし、それを維持するスピード持久力もついています。あと、スタミナの向上も大きいですね。今回、5000mを通過してからの表情に余裕がありましたし、私も“これはいけるかも”と思って見ていました」
ランナーとしてすべての面がレベルアップしたことがこの言葉からわかる。中でも体幹の弱さは田澤自身も課題としていた部分。「レース後半で疲れてくると腰が痛くなってきてフォームが前傾してしまい、ぶれてしまう。それでロスが生まれてペースが落ちるので、今後は鍛えていきたい」と昨年の日本選手権終了時から強化のテーマに掲げていた。
だが体幹強化のために特別なフィジカルトレーニングはここまで行っていない。前回の箱根駅伝後に故障し、春まで本格的な練習ができなかったため取り組む時間は十分にあったが、「走れていない時に体が変わると、戻った時にフォームの感覚も変わってしまう。それに専門的なトレーニングはもっと年齢を重ねてからでいい」との本人の考えからだ。代わりにジョグから腹横筋を使うことを意識し、走りながらの強化に努めてきた。結果的にそれは成功。12月の競技会後、「腰の痛さはまったくなかった」と田澤は1年前との変化を口にしている。