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「日本には強烈なショックが必要だ」トルシエが語るサウジ戦…日本代表に欠けていた「野心」と「マネジメント」を埋める術とは? 

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田村修一

田村修一Shuichi Tamura

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photograph byGetty Images

posted2021/10/11 17:30

「日本には強烈なショックが必要だ」トルシエが語るサウジ戦…日本代表に欠けていた「野心」と「マネジメント」を埋める術とは?<Number Web> photograph by Getty Images

日本代表監督時代、国際Aマッチで23勝11敗16分の成績を残したトルシエは、サウジ戦の日本にがっかりした様子だった

「君の言う通りだが、高いレベルではドイツもフランスもアルゼンチンもブラジルも、どこも日本と同じだ。中国やベトナム、サウジアラビアならひと月なり数週間の準備ができるだろうが、日本の選手たちはヨーロッパのクラブで毎週プレーしているし、監督は3年間このチームを指揮している。選手もスタッフもお互いをよく知り、経験に溢れた選手たちもいる。足りないのはパッションであり野心や決意だ。プレーの強度もなかった。選手は自分たちの経験に依拠しようとしたが……、足りなかったのはフラム(フランス語で情熱、炎などの意)だ。選手たちが本当に勝ちたがっていたか、勝てると信じていたかどうかわからないが、魂はなかった。たしかにあと3日の余裕があれば違うのだろうが、それが負けた理由だとは私には思えない」

――森保はとても合理的で知的な監督ですが、情熱や決意といったメンタルの強さは彼の欠点のひとつかも知れません。

「彼はサッカーをよく知っているとは思うが、マネジメントはまた別だ。選手を刺激して気持ちを高め、彼らのリアクションと最高のパフォーマンスを引き出す。グループに最大限の力を発揮させるのがマネジメントだ。その点で日本人監督は外国人監督とはやり方が違う。欠けていたのはその部分で、チームは眠っていた。選手も怠けていた。

 理性の部分に関しては、私は何とも言えない。ただ、チームの出来は悪く、素晴らしい日本代表とは言えなかった。最終ラインの選手たちは歳を取っていた。長友も酒井もベテランだ。柴崎も、他の中盤は……」

――柴崎は酷かったです。

日本代表はまだ出来あがっていない

「魂もフラムもなかった。問題はどこにあったのか、マネジメントだったのか。私にはよくわからない……。それを指摘できるのは私ではないが、チームがチームとしてプレーしていなかったのは明らかだ。

 これで予選がとても難しくなった。もちろんまだ計算上は、突破は十分に可能だ。諦めるのはまだ早いし気落ちしてはいけない。

 目的達成はまだ可能だが、日本にはもうミスを犯す権利がなくなった。残りの試合を全勝かそれに近い結果を得なければ、直接突破の道は開けないだろう。もちろん3位に入り、プレーオフに出場することも視野に入れるべきだが」

――そこも考えるべきですね。

「目的は何かをハッキリさせる。それは勝つことではなく予選を突破することだ。3位に入ってプレーオフに進むことも十分に可能だ。

【次ページ】 自信の回復が急務だ

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