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「日本には強烈なショックが必要だ」トルシエが語るサウジ戦…日本代表に欠けていた「野心」と「マネジメント」を埋める術とは?
text by
田村修一Shuichi Tamura
photograph byGetty Images
posted2021/10/11 17:30
日本代表監督時代、国際Aマッチで23勝11敗16分の成績を残したトルシエは、サウジ戦の日本にがっかりした様子だった
ただ、本大会の1年前の段階で、日本代表はまだ出来あがっていないというのが私の印象だ。チームは完成していない。プランが感じられないし、何も感じられない。コレクティブな面でとても失望したし心配だ。コレクティブにプレーするのが日本の長所であり、日本人は容易にそれができる。しかし今日の試合では、そうした面がまったく見られずパスは3本と繋がらなかった。縦の速さもなかった。
最後の十数分は違った。サウジがプレーを止めてしまったのはあったが、日本はそれまでとは異なるトライをした。
ここまで酷い日本を見るのは初めてだ。才能がプレーにあらわれることもペナルティエリアへの侵入もなく本当に酷かった」
――次のオーストラリア戦までは移動も含め4日しかありませんが、何をすればいいのでしょうか?
「チームに変化は必要だ。オーストラリアはセットプレーに強い。クロスやCK、FKでは空中戦の強さを発揮する。だからより高いインテンシティが必要だし、久保や田中などフレッシュな選手の投入も必要だろう」
――久保は負傷で今回は招集されていません。堂安もです。
「つまり選択肢は多くはないわけだ。このチームはまだW杯を戦える状態ではない。戦術的にも……、ディフェンスはベテランばかりだ。経験は豊富だが、長友は何歳になったのか?」
――35歳です。酒井も31歳で、吉田は33歳です。
自信の回復が急務だ
「五輪代表がとてもいいチームであったのに、ベテランに頼るのはどうかと思う。ではどうすればいいかと言えば、まったく違う精神状態で試合に臨む。チームをより情熱的かつコレクティブで危険にする。4日では小さなディテールを調整することしかできない。
サウジ戦で酒井はほんの数回しかオーバーラップしなかった。長友も大きく動かなかった。大迫は前線で孤立し、サポートは皆無だった。また日本のボール保持率が46%しかなかったのも驚きだった。そのうえパスが3本4本と繋がっていかない。そうなるとちょっと難しい。
オーストラリアに対してどうプレーするかはわからないが、今は何よりも自信を取り戻すことが問題だ。自信の回復こそが急務だ。
絶対に勝たねばならない試合であるから、選手の両肩には大きな圧力がかかる。だから埼玉スタジアムの観衆はとても重要になる。選手とチームをサポーターが力づける。信じることこそが重要で、予選はまだ終わってはいない。数字の上ではまだまだ突破の可能性がある。だからこそ監督を信頼すべきだし、目覚める必要がある。日本はオーストラリアを破る力を持っているのだから。
試合はいつだ?」