球体とリズムBACK NUMBER
「率直に言って、臆病だ」「理解し難い采配」豪州人記者は森保監督の手腕に疑問符…一方、豪代表の強みは“優秀なスタッフ陣”
posted2021/10/11 17:00
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph by
AFLO
森保一監督の進退と日本代表の命運を懸けた一戦の相手は、世界記録を樹立したばかりのオーストラリア代表だ。サッカールーズ(豪州男子代表の愛称)は前節、オマーンを3-1で下し、ひとつのW杯予選における連勝を11に伸ばした。これでドイツ、スペイン、メキシコと並んでいた10連勝のタイ記録を更新したことになる(ふたつ以上のW杯予選を跨いだ連勝記録はドイツの18)。
もっともその世界新記録は、クウェート、ネパール、ヨルダン、チャイニーズ・タイペイ、中国、ベトナム、オマーンを下して成し遂げたもので、欧州や北中米の予選とそのまま比較することはできない。今回の最終予選でも、真のライバルと目される日本とサウジアラビアとはまだ対戦していないし、第2節のベトナム戦では相手にシュート数で上回られる苦しい展開のなか、前半終盤に決めた1点を守り切り、FIFAランキング95位のチームに辛勝している。
選手の質そのものは決して高くない
このような背景により、偉大な記録を打ち立てながらも、現在のオーストラリア代表を手放しで称賛する向きは少ない。日本在住の豪州人スポーツジャーナリスト、スコット・マッキンタイア記者は次のように話す。
「その記録は、ほとんど意味を持たないものだと思う。当然、これで世界を制したドイツやスペインを上回ったことにはならない。それに現在のオーストラリア代表は、過去のチームと比べると、明らかに選手の能力が劣る」
確かにそうだ。例えば彼らがW杯で唯一、グループステージを突破した2006年の代表には、ハリー・キューウェルやマーク・ビドゥカ、ティム・ケーヒルらが揃っていた。日常的にチャンピオンズリーグやプレミアリーグでトップレベルの修羅場を経験していた彼らは、豪州の“黄金世代”と呼ばれ、そのドイツ大会では日本を逆転で下すなどし、ブラジルと共に決勝トーナメントに進出している。