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「一瞬のスキも見せられない」まさかの苦戦、疑惑の判定…日本代表が経験してきた“W杯最終予選の厳しさ”
posted2021/09/01 17:05
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
AFLO
W杯最終予選は、2次予選とまったく違う戦いになると言われる。そのなかでも開幕戦は、とりわけ難しくて厳しい。息苦しいほどの記憶が、よみがえってくる。
vs北朝鮮)まさかの「1対1」で後半ロスタイム突入
最終予選がいかにタフな戦いとなるのかを、私たちが最初に認識することとなったのは2005年2月9日だ。ドイツW杯最終予選の北朝鮮戦である。
FIFAランキングは日本が19位で北朝鮮が97位である。アジア最上位と同18位の対決だった。さらに言えば、ジーコ率いる日本は前年のアジアカップで優勝しており、北朝鮮は予選で敗れている。
客観的な実力の比較では日本が優位だったはずだが、彼我の力関係はスコアに反映されない。1対1のまま3分の後半ロスタイムへ突入し、大黒将志のゴールで辛うじて北朝鮮を振り切ったのだった。
キャプテンの宮本恒靖は、「1次予選の初戦のオマーン戦も、後半ロスタイムの得点で1対0だった。アジアカップでも苦しい試合は何度もあった。簡単な試合にならないのは覚悟していたけれど、最終予選ではこういう試合が続くのだと思う」と話した。97年のフランスW杯アジア最終予選を知る川口能活は、「やっぱり、こういう試合になりましたね」と苦い笑みを浮かべ、メンタルの重要性を説いた。
「どれだけ勝利に執着できるか。W杯に出るんだという気持ちで相手を上回ったチームが、最後は勝つんだと思います」
vsバーレーン)85分までは快勝モードだったのに……
10年の南アフリカW杯を目指す最終予選は、08年9月6日のアウェイゲームで幕を開けた。バーレーンの首都マナマのナショナルスタジアムには、21時半のキックオフ時点で32度の暑さが居座っていた。
バーレーンとは3月の3次予選でも対戦し、アウェイでは0対1で敗れている。ただ、国内組のみで臨んだ前回と異なり、今回はセルティックの中村俊輔、サンテティエンヌの松井大輔、ヴォルフスブルクの長谷部誠が先発に名を連ねている。
85分までは快勝ムードだった。18分に中村俊が直接FKを叩き込み、前半終了間際には遠藤保仁がPKを決める。85分には途中出場の中村憲剛が左足ミドルを突き刺したが、ここから試合は一変する。後半途中に退場者を出したバーレーンに87分と88分に得点を許し、終わってみれば1点差での辛勝となったのだ。