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「一瞬のスキも見せられない」まさかの苦戦、疑惑の判定…日本代表が経験してきた“W杯最終予選の厳しさ”
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFLO
posted2021/09/01 17:05
いよいよW杯最終予選が始まる。とくに日本は開幕戦でその厳しさを痛感してきた
しかし、20分に直接FKを献上して同点とされる。後半開始早々の54分にも、PKから失点してしまう。
UAEに微妙な判定のPKを与えたことで、日本側にはカタール人のアブドゥルラフマン・アルジャシム主審への不信感が漂っていた。68分には途中出場の宇佐美貴史がペナルティエリア内で倒されたが、主審はノーファウルと見なす。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、ピッチに飛び出して抗議をした。
76分には明らかなゴールを取り消された。浅野拓磨のシュートはゴールラインを越えていたが、主審も副審も認めない。1対2のままスコアは動かず、日本は黒星スタートとなったのだった。
主審の判定がクローズアップされたが、キャプテンの長谷部は「それを差し引いてもどうにかしなければいけない」と、自分たちに矢印を向けた。コンディションについて聞かれると、「それは言い訳にできないですから」と断りを入れたうえで、「ヨーロッパはシーズンが始まったばかりなので、選手によってバラつきはあったと思います」と説明した。
コンディションの違いもあった。日本の選手は試合の4日前から段階的に合流し、全員が揃ったのは2日前だった。一方のUAEは、1週間前に中国で北朝鮮とテストマッチを消化していた。時差対策も万全だった。
9月2日に控えるオマーン戦は、前回のUAE戦に背景が近い。
焦らず、慌てず、臆せず、ミスを恐れず
海外組のなかには、シーズンが始まったばかりの選手もいる。所属クラブで公式戦に出ていない選手もいる。8月30日のトレーニング初日は、招集された24人のうち17人が参加した。いつものことながら、ホームゲームでも準備の時間は限られる。
それに対してオマーンは、8月からセルビアで長期合宿を張ってきた。指揮官ブランコ・イバンコビッチは、98年のフランスW杯でクロアチア代表のコーチを務め、初出場で3位に躍進したチームを支えた。06年のドイツW杯では、イラン代表監督として采配を振るった。アジア最終予選を戦ったこともある。経験豊富な監督のもとで入念な準備を重ね、オマーンは日本に乗り込んでくる。
オマーン戦に臨む選手たちは、「W杯ベスト8入りの目標を踏まえると、アジアでは力の差を見せつけなければいけない」とか、「ホームで負けるわけにはいかない」といった気持ちを抱いていることだろう。同時に、「簡単な試合にはならない」という覚悟も、胸に刻んでいるはずである。
理想を追いかけつつも現実に向き合うオマーン戦では、胆力が問われる。焦らず、慌てず、臆せず、ミスを恐れず、勝利へのプロセスを踏んでいく。自分たちが何をするべきかをしっかりと見定めることが、前回の覆轍を踏まない第一歩となるはずだ。