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「バルセロナは礼を欠いていた」…クーマン監督に戦力外を食らったスアレスがアトレティコで完全復活を遂げた理由とは
posted2021/06/03 17:01
text by
フローラン・トルシュFlorent Torchut
photograph by
L’Équipe
昨年夏にルイス・スアレスがFCバルセロナからアトレティコ・マドリーに移籍したとき、選手としての彼のピークはもう過ぎたという印象を与えた。2015~16年シーズンには40ゴールをあげてリーガ得点王に輝いたが、その後徐々に得点は減り、昨シーズンは怪我による離脱の影響があったとはいえ28試合に出場して16ゴールに留まった。バルサの新監督に就任したロナルド・クーマンがまっさきに行なったのが、スアレスに戦力外を伝えることだった。
だが、スアレスは、移籍先のアトレティコで鮮やかな復活を遂げた。アトレティコが2014年以来7年ぶり11度目のリーガ制覇を果たしたのも、彼の活躍なしにはありえなかった。
時間は少々遡るが、『フランス・フットボール』誌2月23日発売号はフローラン・トルシュ記者によるスアレスのロングインタビューを掲載している。スアレス自身が語る、アトレティコで大爆発できた理由と再生の過程を、前後2回に分けてお届けする。(全2回の1回目/#2に続く・肩書や年齢などは『フランス・フットボール』誌掲載当時のままです)
(田村修一)
15年前、まだ無名だった頃
――今から15年前に、ウルグアイ(ナシオナル・モンテビデオ)からオランダのフローニンゲンにやってきたときには無名だったあなたが、その後アヤックスを経てリバプール、バルセロナ、アトレティコ・マドリーというトップクラブでキャリアを重ねることを想像できましたか?
スアレス 南米の選手がヨーロッパに辿り着いたときに、その後どうなるかを想像することなど不可能だ。すべてが過去となった今は、自分のキャリアを振り返ることもあるし、そうしたクラブでの素晴らしい出来事を思い出すこともある。最近、プロデビューしたてのころからの友人と話す機会があったが、そのときも昔話で盛り上がった。すでに遠い過去のことで、忘れていたこともたくさんあった。時間がたつのは速いと思ったし、自分が歳を取ったと感じたよ。
――練習と試合と移動の生活を続けるのは、だんだんきつくなったと感じていますか?
スアレス 最も重要なのはメンタルだ。頭の中を常にしっかりと保ち、厳しい状況でも克服できると思えることこそが大事だ。どんなに大変なときでも、胸を張っていられるのが僕の長所のひとつだと思っている。そうであるから僕は、このクラブ(アトレティコ・マドリー)に来ることができた。自分が頼りになる存在であるのを証明したいのは、僕にとってモチベーションのひとつだ。自尊心の問題でもある。バルセロナでの日々を経た後でも、僕はスペインのトップレベルでまだまだやれることを示したかった。